2021.01.29 COLUMN

今更聞けないファッション業界のルール:プロパー消化率ってなに?

by 深地雅也

こんにちは、深地です。

ニュースウォッチとアパレル上場企業の決算書を読むのが趣味の筆者ですが(これでよく変態と言われます)、コロナ禍で在庫が大量に余った企業がセールで在庫消化を促進したり、はたまた次シーズンの仕入れを抑制したりと様々な対策に追われています。そんな中、頻繁に出てくるキーワードで「プロパー消化率」というものがあります。

アパレルの余剰在庫はどうして生まれるの?

アパレルの余剰在庫はどうして生まれるの?

以前に執筆した記事にも簡単に解説は入れておりますが、わかりやすい言葉で言いますと「定価で販売した割合」の事ですね。当然ながら、各社業績が悪化していますから「プロパー消化率向上」を掲げる訳ですが、このプロパー消化率には色々と落とし穴があるのです。現場にいないと中々わからない事ですが、そのあたりを簡単に解説したいと思います。

クーポン販売はプロパーか?

まずは一番大きな疑問なのですが、よくECモール等で配られている「クーポン」について。これを使用すると「値引き」と同じなので「プロパー販売」ではないというのが普通の認識でしょう。しかし、このクーポン販売をプロパーとしてカウントしている企業があるのです。

今更聞けないファッション業界のルール:「販管費って何?」

今更聞けないファッション業界のルール:「販管費って何?」

理由としましてはクーポンはセールと違い決算書の勘定科目では「販売促進費」に含む企業もあるからですね。ではセールはどういう風に計算するかと言いますと、

売上高 – 売上原価 =売上総利益(粗利益)

という計算でまずは売上総利益を算出します。セールになると定価から何%かオフされるので、想定したより当然「売上高」は下がりますが、その商品の原価は下がらないので売上総利益(粗利益)は下がっていきます。つまりセールをやればやるほど、粗利が下がる。 プロパー消化率を上げましょう、というのは言い換えると粗利益を高めながら在庫消化を促進していきましょう、という事でもあります。クーポン販売なら、決算書上はこの粗利益が削られませんので「クーポンはプロパー販売」という謎理論が出てきてしまうのですが、販管費は増大していきます。

売上総利益(粗利益) – 販管費 = 営業利益

なので、どちらにせよ営業利益がどんどん削られていく訳ですね。結局は自社の利益が削られているのに、勘定科目の中のどの部分をKPIに設定するのかによってこんな話が出てくるのです。これを企業のトップが「クーポンはプロパー販売において重要」と言っていたりするので頭痛が痛いです。

ECでプロパー消化を促進出来るの?

そんなクーポン販売ですが、一番目立つのはECですね。今や、ZOZOのようなモールだけでなく、自社ECにおいてもクーポン・ポイント付与は重要な販促の一つになっています。それだけではなく、タイムセールやアウトレット販売なども横行していて、プロパー期間などあったものではありませんね。こんな状況にユーザーも慣れてしまっていますから、「この商品ならこのショップでそのうちセールするから、その時に買う。」「クーポン対象の商品を見に行く。」といった行動を取る事も多いでしょう。

オンライン専業で、流通コントロールをしっかりやって、短時間で売り切るスキームならプロパー販売の促進は可能ですが…。

人気ファッション系Youtuberに聞く!完売必至のオンラインショップの秘訣

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以前書きました人気YouTuberの売り方ですね。しかし、大手アパレルは過去からこういった手法を取っていません。業態が全く違うので出来ない、というのが正しいでしょう。大手アパレルの決算書を見ると、今後の方針として「プロパー消化率の向上」に加え「EC化率の向上」もセットで掲げられていますが、ただでさえプロパー販売し辛いECでこれが促進出来るのか非常に疑問ですね。

プロパー消化率ってどうやって算出するの?

極め付けはこちらですね。プロパー消化率をどう算出するのか?は上記の項目を見てもらえたらよくわかると思いますが、こちらに関しては、

プロパー消化率って何よ?

プロパー消化率って何よ?

・販売員の友人が来店し、友人値引きした場合はどうなるの?

・1時間のタイムセールで売れた場合の商品は、どうカウントするの?

・ポイントカードのポイント使用はどうすんの?

・カウントをいちいち販売員にアナログで集計させるの?

・ルミネ10%等、ディベロッパー側のイベントで売れた場合どうすんの?

・セールできない契約の商品はカウントしても意味なくない?

・結局、どこで線引きするの?

MDのスペシャリスト・マサ佐藤氏の上記記事が詳細に書いてくれていますので抜粋致します。ポイントも販売促進費なので、クーポン販売同様、プロパーにカウントしているでしょう。商業施設側の負担で値引き販売した際もプロパーでカウントでしょうかね…。今のように、其処彼処で年中値引き施策をやっていたらプロパー消化率を正確に把握する事など不可能でしょう。努力目標として「なるべくプロパーで販売していきましょう」というのはわかりますが、KPIとして設定する事には違和感があります。

 

筆者も過去、「プロパー消化率は重要!」と考えていた時期がありましたが、ECを生業にしてからそんな考えは吹っ飛びました。年中セールやってるんだから当然と言えば当然ですね。また、卸業者から委託で仕入れているセレクトショップならば、セールを抑制するだけでプロパー消化率が勝手に上がります。残った在庫は返品してしまえばいいのですから。しかし、それは他社の犠牲の上に成り立っていますし、得られていたかもしれない「利益」を損なう可能性もあるのです。企業によって課題やKPIはそれぞれ違いますから、判で押したような指標やスキームには意味が無い事を知るのが全てのスタートなのかもしれませんね。

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