2020.08.20 COLUMN

今更聞けないファッション業界のルール:「販管費って何?」

by 深地雅也

こんにちは、深地です。

アパレル業界では今年度の3〜5月の業績が出揃い、各社散々な数字が日々報じられています。店舗を閉めたり時短営業で対応したりと、売上が上がらないのに家賃や人件費は発生し続けるのですから業績が悪くなるのも当たり前。改めて、アパレルは店舗ありきの商売なのだと痛感させられます。

このような事態に陥った事から、「販管費」について見直している企業も多いかと思います。店舗を縮小し、ECの比重を伸ばしていく動きも、この「販管費」を圧縮しながら利益率を高めていくといった方針でしょう。

筆者はアパレルの決算書を見るのが好きで、よく数字を見ながら分析しているのですが、この販管費一つ取っても各社で大きく違いが出るのですから面白いです。そんな訳で、本日は企業別の販管費について軽く触れてみたいと思います。

 

販管費とは?

そもそも「販管費」とは何か?という事なのですが、決算書の項目にて「販売費及び一般管理費」と記載されている箇所になります。「販管費率」は売上に対する販管費の割合ですね。内訳は様々あるのですが、店舗商売では「人件費」と「家賃」の比重が大きいでしょう。企業によって公開している部分は違いますが、パルグループなんかは細かく分類してくれているのでわかりやすいです。(企業によっては細かい内訳を掲載していない場合もあります。)

パルグループ IR

「給料手当及び賞与」と「賃借料」の比重が大きいのがすぐわかりますが、こちらが人件費と家賃ですね。パルの直近の決算で販管費率が49.4%。アパレル上場企業の決算書を横断して見ていますと、大体が45〜50%の企業が多いです。ユニクロ・GUを擁するファーストリテイリングは40%を切ってますのでめちゃくちゃ低いですね。しかし業界にはもっとローコストで運営している企業もいくつか存在します。

 

郊外型店舗中心の企業は販管費が低い

しまむら IR

ローコストオペレーションで有名なのはやはりしまむらでしょうか。郊外中心に出店、セルフ販売方式で人件費も抑制。自前で物流網を持つ事で配送費も格段に抑える事に成功しています。近年、売上不振に苦しんでいるものの、販管費率28.2%と業界水準を大きく下回っています。しまむらの業績が良い時は24%程度だったのですが、最近は店舗が増えている割に売上が伸びていません。結果、販管費率が高騰してしまっているという事ですね。

しかし、しまむらが業界最低水準かと思いきや、更に販管費率が下回っている企業が…。

ワークマン IR

皆様ご存知、破竹の勢いで快進撃を続けるワークマン。販管費率は何と驚異の16.5%…。やり過ぎですね。郊外中心に出店しているという事ももちろんあるのですが最大の原因は、

FC加盟店の契約内容でしょう。ワークマンは出店店舗数が876店舗あるのですが、うち829店舗はFC加盟店の店舗数、つまりオーナーが別になります。上記をご覧頂ければわかる通り、FC加盟店は月間の粗利益から一定の割合で報酬を受け取るといった形態。一部、家賃や光熱費等の本部負担はあるものの、人件費や在庫リスクはもちろん、水道光熱費・販促費の一部もFC加盟店が負担。結果、月商1000万円のショップでワークマン側の負担はFC加盟店の報酬含めて238万円。つまり販管費率を24%程度に抑える事が可能です。これならどんな不況になっても理論上は販管費率が上がる事はありませんね。FC加盟店が保つかどうかは別の話ですが。

 

ECで発生する販管費は?

一般的に販管費率が低いと言われているECはどうなのでしょうか?代表的なところでZOZOの決算書を見てみる事に。

販管費率68.3%と、一般的なアパレルより比率が高いですね。業績が好調だった直近の第一Qだけ抜き取っても65%前後。ZOZOの場合、費用として圧倒的に大きいのが「荷造運搬費」、つまり商品の配送費用ですね。次いで代金回収手数料、業務委託費、人件費といった順。ツケ払いのような後払い決済における代金回収サービスの手数料が大きいのがわかります。ZOZOの場合、ZOZOTOWNの中で売れた商品は20年3月期で3450億円。流通総額に対しての販管費率は24.9%なので、こちらで見ると非常に低いと言えます。

ZOZOの業績の内訳だけで判断するなら、ECモールは販管費を抑えるというより委託商売で粗利率を最大化し、利益を高めているといった方針ですね。セールもクーポンも、負担はブランド側なので粗利は確保しやすいでしょう。

 

今回は販管費に照準を絞って各社の業績を見てみましたが、企業によって特色があり戦略が非常にわかりやすいですね。不況になると各社「固定費を削る」といった動きに出るのですが、その比重が大きいのがこの販管費に他なりません。この先、日本は更に大きな不況になると言われていますが、販管費をいかに圧縮していくかも各社の戦略に組み込まれていくでしょうから、今後も注視していくべき指標ではないでしょうか。

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