2020.07.30 COLUMN

参入障壁が低いってほんと?アパレル業界の現状

by 深地雅也

こんにちは、深地です。

最近、ブランドが破綻するニュースばかりでゲンナリしますね。アパレルに生息しているとどうしても同業他社の不幸なニュースばかり耳にしやすく、最近は有名ブランド・ショップですら破綻するケースも珍しくなくなってきました。

「コロナの影響でブランドがどんどんと破綻している。」と言われる事もありますが、今破綻しているところはそもそもキャッシュフローが滞っていて、いつ破綻するかの瀬戸際だったように思われます。たまたま、コロナで店が閉まってしまいそれが引き金になった、という具合でしょうか。

とは言え、店舗閉鎖がアパレルにとってどれだけ苦しい状況なのかは、中にいる人であればよくおわかりでしょう。ECが好調だとしても、まだまだ人の購買行動はリアルがメイン。ECに取って代る事はしばらくは無い事を逆に証明してしまったかもしれません。

さて、そんな状況ではあるのですが、それでも毎年新ブランドを発表する事業者や、ブランドを創りたいという若者は結構な数いらっしゃいます。D2Cブームもまだまだ継続しているようで、それを支援するサービスが乱立。Twitterでもユーザーネームに「@D2C」と付ける人もたくさんいらっしゃいまして、俄かには理解しがたい状況です。

そのビジネス、昔からありましたよね?実は新しくないD2C

(D2Cが新しいビジネスでは無い事は以前に書いたこちらをご覧ください。)

この状況の背景には「アパレルは参入障壁が低く、チャンスが多い」と思われている節があります。それは半分事実で、物理的に参入は容易です。服を買い付けて、BASEで販売すれば明日からあなたも新規参入できるのですから。しかし、「勝機」という部分で言うと果たして参入障壁は低いと言えるのでしょうか?

本日はそこにフォーカスしたいと思います。

 

衣料品の供給過多・業界の寡占化・EC


Photo by Egor Myznik on Unsplash

 

どこでもよく報じられるお話ですが、国内衣料品は29億点が供給され、そのうち15億点が売れ残ると言われています。国内市場規模は30年前には15兆円程度あったのですが、今や9兆円そこそこ。供給が増えているのに市場規模が下がっているという事実は、この20年で衣料品の平均単価が40%ほど下落しているからこそ起こっています。明らかに、これ以上服は必要無いという状況。

また、アパレルが新規参入しやすいと言われる所以の一つで「寡占化が進んでいない」業界だからというお話もあります。小さいプレイヤーが多く、それだけに勝算があるという事ですが、これは真実なのでしょうか?

アパレルの国内トップ10の売上を10数年前と比較するとすぐわかるのですが、上位10社の売上規模は拡大しています。特に1位のファーストリテイリングは国内だけで1兆円程度の売上を叩き出していて、そのシェア率は1社で10%程度。アパレル上位10社を集めると国内売上全体の30%程度を占めます。他業界と比較すると寡占化が進んでいないように見えますが、それでも以前と比較すると確実に参入障壁は上がっていますし、一口に「衣料品」と言ってもカテゴリーは細分化されるので、数字で見る以上に参入できる余地は少ないのです。

昨今トレンドであるECも、これに拍車をかけるツールです。目的買いの側面が強いECはブランド力で勝負が決まりやすく、強者総取りになりやすい傾向にあります。

「供給過多」「寡占化」「EC」と、新規参入者には厳しい条件が整ってきているのです。

 

スペック勝負なら規模の経済に勝ち目無し

今の時代、小ロットで商品が発注可能なサービスが増え小規模ブランドでも運営可能…ではあるのですが、それはリスクヘッジだけでコストパフォーマンスを押し上げるものではありません。衣料品を「機能」「品質」という側面で見た時、規模は正義です。大手が強いのは、出店店舗数が多く大ロットで発注をかけても商品を捌ける。捌けるという事は大きな売上を取れる、という事です。生産枚数が増えると商品1点あたりの企画コストは下がり、更には工場への交渉力が強くなるから工賃を抑えやすい。規模はそう簡単に覆せるものではありませんので、肥大化した大手アパレルと戦おうとするとスペック勝負では歯が立ちません。

 

「トレンド」「世界観」「商品力」って何?成功要因が曖昧


Photo by Andreea Pop on Unsplash

 

アパレルには定義が曖昧、且つその時々で中身が変化するワードがいくつかあります。それが「トレンド」「世界観」「商品力」あたりでしょうか。

直訳するとトレンド=流行、という意味ですが、このトレンドはシーズンによって変化します。ざっくり分けると春夏シーズンと秋冬シーズンで移り変わるのが通例。更にこのトレンド、消費者が本当に買ったものという訳でもなく、コレクションショーでよく使われたアイテムやスタイルを元にメディアが発信します。つまり、全く消費者が買わなかったとしてもトレンドとして発信される事もあるのです。その上、ストリートから派生するトレンドや今ではInstagram上から生まれてくるトレンドもあったりと、同じトレンドという言葉を使っていてもその中身は全く違っているのですから、ややこし過ぎますね。

「ブランドは世界観が重要」なんて言葉は業界にいれば聞き飽きたでしょう。ではこの「世界観」とは一体何なのでしょうか?こちらもめちゃくちゃざっくり言いますと、ブランドが発信するイメージなのでしょうけど、それは誰が決めてどのように担保するのでしょうか?

「商品力が無いとリピートされない」。はい、言っていることはわかります。ですが、商品力について特に一定の基準が設けられている訳でもなく、その時代のトレンドに左右されることもあります。早い話が、どんなに機能性に優れた商品でもトレンドからずれていたら「ダサい」と言われ、商品力が無いとみなされるのです。

このような曖昧ワードに囲まれてしまうと、ロジカルな人ほど混乱してしまうのではないでしょうか。

 

掘り起こすとまだまだありそうですが代表的なところを見るだけでも参入障壁が低いとは言い難いですね。「サブスクリプション 」「D2C」のように新しいと思われているビジネスモデルで参入している企業が赤字垂れ流しという事例も多く、必勝法など当然ながらありません。かと言って、全く夢の無い業界と言っている訳ではなく、勝算が無いのに不勉強のまま勢いで参入する人が多いのが問題なのです。これからアパレルに参入される方におかれましては「チャンスがある」「マーケットが大きい」という理由だけで参入するのではなく、それをやり切る熱量と事前のリサーチを重視して準備をしてほしいものですね。

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