2020.03.16 INTERVIEW

旧態依然なファッション教育に必要なことは?講師3名による座談会(後編)

by STYLE it.編集部

これまでSTYLE it.では、ファッションテックについて学べる学校や、トータルプロデュースを行ってくれる学校を運営している方を取材したりと教育の現場についても触れてきました。

そこで、それぞれファッション業界で活躍する傍ら教育にも携わっているお三方にお集まりいただき、「今のファッション教育に必要なことは?」をテーマにぶっちゃけ座談会を開催!今の学生の特徴や、専門学校の変えるべきところなど、たくさん話していただきました。後編となる今回は、専門学校の知られざる実態について。通っていた方もそうでない方も、目を通してみてください。

※内容はビジネスコースのものであり、パタンナーなどのクリエイターコースはまた異なります。

■前編はこちらから

旧態依然なファッション教育に必要なことは?講師3名による座談会(前編)

変わらない専門学校

─ お三方が学生だった頃と現在とで、学校側の変化はありますか?

深地さん(以下敬称略):僕が専門学生だった頃と、何も変わってないということが1番の問題なんですよ。内容もアップデートされてなければ、先生の顔ぶれが変わってないんです。僕が教えていた関西の専門学校では、学生に授業のアンケートを取るんですけど、低い評価は公開せずに蓋をすることもあるんです。そんなことを営業の方から僕に相談されるくらいには危機的状況というか…。

深谷さん(以下敬称略):闇ですね。

深地:僕はこれまで大阪で3校講師を勤めてきたんですけど、どこの職員室も約95%が卒業生で構成されているんですよ。卒業後、職に就いても2,3年でドロップアウトしてしまった人を講師として引っ張ってきてそのまま勤務させているので、そういう状況が起こるんですよね。もしくは完全に引退しておじいちゃん・おばあちゃんになった人を連れてくるとか。

深谷:やばいじゃないですか、丁度いい人がいないじゃないですか。

深地:そうなんですよ。そもそも学校の給料が安いので、第一線で活躍している人がくるわけないんです。となると、職員室が卒業生で埋まる。じゃあその人たちが業界のことを教えられるかというと、持っている情報が昔過ぎたり、そもそも持ってないので教えられることがない。学生も「この人の言ってること大したことないんだろうな」と気づいて、信用できそうな先生とかに不安をこぼすんですよ。

深谷:前半の話も踏まえると、一般教養ない学生が入学して、頑張って就職するじゃないですか。でもすぐに負けちゃって、講師になるんですよね。で、また教養のない人が入ってくるということですよね。そりゃこうなりますね。

深地:負のループなんです。僕がカリキュラムを作ることになったヒューマンアカデミーでは、まず講師を入れ替えるところから着手しました。ヒューマンアカデミーは、バンタンデザイン研究所同様株式会社化しているカンパニースクールなので、カリキュラムの変更もしやすくレスポンスも早いので、ソーシャルメディアの授業やEコマースの授業の導入も早かったです。

教員も生徒も“目的”がない

─ そういった状況の中で、学生は最近のファッション業界事情を知ってるんですか?

深谷:この前イベントに登壇したんですけど、イベントに来ていた学生さんからはD2Cブランドに対する質問があがりましたね。メディアに情報を取りに行っている子たちは現場の実情を知らないので、メディアに踊らされてる感を感じました。

吉田(以下敬称略):逆にある講義で質問したときにはD2Cブランドのことを知らない生徒も多かったですよ。他の学校は分からないんですけど、文化は高校のような仕組みになっていて、授業の出欠が厳しかったり突発的な課題も出たりするので、時間が読めずファッション関連のインターンやアルバイトがしにくいんですよね。結果としてどうしても受け身な形になってしまう。それでも尚自ら外へ足を運ぶことができている子は全体の1割くらいの印象ですね。

─ 専門学生と4大に通う子たちの差が開いていく気がします。

吉田:学びの目的が明確じゃないのかな…という気がするんですよね。学校運営をすることが目的になっているので、教員も生徒も目的がない。深谷さんのようにゴールを設定できていれば、学ぶ側も能動的に授業を受けると思うんですけど、やっぱりキャリアの相談を受けてもなりたい姿や身に付けたい能力を明確にできている学生が少ない。親が学費を払っているケースがほとんどなので、自分が身銭を切って情報を取りに行くぞという意識が低い。もしかしたら、専門学校に入るもっと前の段階で、目的を持たせることが必要なのかもしれない。目的があるから、ファッションの専門学校を選択する形にしないと。

深地:そうなんですよね。でもそこで言うと、入学前の営業習慣も問題で。夢のある学生に対して「MDになりたいの?なれるよ!」と言ってしまうんですよね。でも、現実は新卒での求人は0。9割販売員になるんだから、販売員としてのスキルを身につけるべきじゃないですか。そこを考慮した上でキャリアアップを考えなさい。」と伝えると二度と来なくなる学生さんは多いですね。でも、それを「デザイナーになれるよ、MDになれるよ」と言うだけ言って入学させる学校があるから、現実とのギャップに負けてしまうんですよね。

深谷:絶対最初から伝えた方がいいですよ。だって厳しいもん。

今のファッション教育には、実践の場が必要

─ 学校以外で学ぼうとしたら、学生さんはどう行動するのがいいと思いますか?

深谷:僕は、やっぱり専門学校に通ってから学ぼうと思っている時点で弱いと思っていて。好きで本当にやりたい人って年齢や環境に関係なくやってますもん。僕はそういうところで専門学校に行く意味を感じず、早く現場の話を聞くために卒業後すぐアパレルに就職したんですよね。

吉田:将来やりたいことの1つでもあるんですけど、地方出身の子と都心の子とでは全然感覚が違っていて。周りに憧れの対象となる大人がいないと、本当は能力がある子ですら埋もれちゃうと思うんです。学生に対して知る機会を提供したり、仕事を楽しんでいるかっこいい大人が学生の周りに必要ですよね。

─ 最後に、今のファッション教育に必要だと思うことを教えてください。

深谷:カリキュラムの中に、自分でブランドを作る授業があるといいんじゃないかと思います。卒業時には自分のブランドを持ってて、しかも回せている。くらいのところまで教育してあげるべきだと思います。「学生のときに起業していて、SNSのフォロワーも3万人、売上500万円でした。こういう風に売上あげたので、そのスキルを使って御社でMDとして働きたいです。」と言えば、新卒でも通ると思うんです。そういう風に、既存のアパレル業界を抜いていかないとなかなか上にはいけないと思います。

深地:僕は、企業と学校がもっと協力して実践の場を作るべきだと思います。これまでやっていた模擬ではなく、もう少しリアルな場を提供する必要があるなと。現場で得た課題を学校に持ち帰って、教員が一緒に課題を解決してあげる必要があります。
あと、学校が設けているコース別の定員人数はクリエイターコースが1番多いのですが、実際の求人は90%が販売なんですよ。それこそ、応募が多いなら試験を行なったりしてヒエラルキーを作らないと、コースの定員と求人に差がありすぎて、学生は「思ってたのと違う」と感じますよね。

深谷:でもそれ、いいですね。1年生では販売やって、成績によってデザインのことを学べる。とかだったら頑張るじゃないですか。

深地:企業側も、上のコース出身の学生には給料が少し高いとか、そういう制度があってもいいと思います。学校内で優秀でも卒業したら土俵が一緒だなんて納得できないですよね。

深谷:例えば、ファミリーセールで余った在庫を集めて、学生の子に好きにキャッシュに変えるという課題を与えて、1番キャッシュに変えた子を採用するとか、そういう就職イベントがあってもいいですよね。

吉田:僕も、実践の場を設けるべきだと思います。食わず嫌いって言葉あるじゃないですか?でも食わず好きってないんですよね。人は知らないことは好きになりようがない。やりたいことが見つからない人は、まずいろんなことを経験してみること。そして、その上で好きが見つかったらいいなと思いますね。

あと、学生がフィードバックをもらう機会が少ないと思うので、企業からここの学校の卒業生は優秀だ。といったちゃんとしたフィードバックがあるといいですよね。それなら企業がお金出して学校作れば1番いいんですけどね。いい人材を輩出しないと意味がないので。

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