2020.03.12 COLUMN

“外出自粛”ムードは、ECの売上UPに貢献するのか?

by 深地雅也

こんにちは、深地です。

コロナウイルスの影響で自粛ムードが漂う中、国内のアパレル店舗も客数が激減しており、大打撃を受けているところでしょう。

外出自粛要請後の全国アパレル小売店のリアルな現状

上記の記事では販売現場のリアルな数字が挙げられていますが、入店客数が7掛け、8掛けは当たり前。筆者のお知り合いの某有名ブランドでは、直近の週間売上が昨年対比で50%程度にまで落ち込んでいるとの事で、この状況が続けば倒産する企業も続出するのでは?という事態。

店頭がそんな状況だからか、各社が期待するチャネルがEC(イーコマース)。「消費者が自宅にいる」という理由から、「多くの人がECでお買い物するのでは?」という考え方でしょうか。

 

新型コロナで”巣ごもり消費”が後押し、ユナイテッドアローズとワールドでEC売上増加

一部の大手ブランドではEC売上が20%弱伸びたという報道。これを受けて各社、更にECに注力するのではないか?と推測されます。しかし、果たしてECが起死回生の一手になるのでしょうか?

 

以前からあった天候不順時の「過度な期待」

過去からアパレル企業の上層部は、

「天候不順の日にはECが売れる!」

という思い込みがあるようで、伸びがそれほど良くないと、

「どうしてECの売上が伸びていないんだ?」

と現場担当者に疑問を投げかける事が多々あったようです。しかしここでよく考えてほしいのですが、当然ながらまだまだリアルでお買い物する人の数が圧倒的に多いという事実を忘れてはいないでしょうか?

国内電子商取引市場規模(経済産業省)

超有名な資料をお出ししますが、経済産業省の調べでは国内物販のEC化率は2018年時点で6.22%。衣料品だけを抜き取っても12.96%程度。1年は経過していますが、それでもまだ大半がリアルで物を購入しているという事実は覆らないでしょう。リアルでお買い物する人はWebも閲覧するでしょうけど、これは購買決定の1要素に過ぎません。サイズや素材・シルエットなど、まだまだリアルとの情報量に差があるWeb上だけでお買い物が完結するのはもう少し先のお話になるでしょう。

コロナで外出しない現状も、天候不順時と同様、消費者が物を手にとって見る機会が激減していますから、購買意欲が普段より喚起されないのは当然かと思います。特定のブランドの特定のアイテムを探している所謂「目的買い」の人ならば、この機会にECで積極的にお買い物もするでしょう。その結果、普段よりEC売上が伸びるのはわかります。ですが、消費者は現物を見た時以上に購買意欲が上がる事はありませんから、店舗売上を担保するほど劇的にEC売上が伸びる事は無いのです。アパレル企業上層部の方々は、ご自身がWebでお買い物をしないからこういった事実について想像がつかないのでしょうか。

 

ソーシャルメディアのフォロワーは増えやすくなってはいるが…

Tyler Nix

自宅に閉じこもっている分、伸びやすいものが一つあります。それはソーシャルメディアのリーチやフォロワーです。これはSNSの運用代行やSNS広告を生業にしている人ならよくおわかりでしょう。筆者が連携している事業者にヒアリングしたところ、リーチもフォロワー増加も、大体10%程度はいつもより伸びがよく、今のうちにファン獲得に力を入れているブランドもちらほら見かけるようです。特に目立つのは若年層ブランドのようで、若者たちは学校が休みになり可処分時間が増えているのでしょう。こういった状況でもやれる事はあるものですね。

 

コンバージョン経路から紐解くユーザーの購買導線

SNSのリーチやフォロワーが伸びやすいなら、そのままECサイトに誘導してお買い物してもらえるのでは?と思う方もいらっしゃるでしょう。しかし、そういった購買行動も限定的なのです。理由はいくつかあるのですが、ユーザーの購買導線を見てみれば明らかです。ECを生業にする人ならよくおわかりでしょうが、ほとんどのユーザーはソーシャルメディアから一直線でECサイトでお買い物する事はありません。もちろん自社がどの集客経路を強化しているかにもよりますが、大半は商品ページをお気に入りに入れたりしながら、ソーシャルを経由しながら比較検討を繰り返し、何度も再訪して購買に至ります。その経由の中には当然、リアルショップも含まれる訳です。

もう1点はやはり価格の問題でしょうか。プチプラブランドの場合なら、Web上の情報だけで購買するケースもよくあるでしょう。それこそInstagramを見て「欲しい!」と思ってすぐ購買に至るケースも増えるかと思います。しかし、価格が高くなればなるほど決済するのに心理的負担が上がりますから、結局は店舗で物を確認しに行きます。Webだけで購買が完結しないケースが多いのは自分事で考えれば明白でしょう。


EC担当者にヒアリングしておりますと、店頭が売れない今、在庫をECに集めているアパレルは多いようです。確かにそれは正しい戦略なのだと思います。しかし、先述した通り、EC売上が店頭売上を全てカバーする事は無く、需要喚起には店頭の力が大きく作用しているのです。また、このような時にWebだけで決済されやすい要素の一つは「ブランド力」に他なりません。非常事態の時こそ、改めて「店頭」と「ブランド」の大切さが身に沁みて感じられますね。アパレル企業上層部の方々におかれましては、ECに過度な期待をせず、コツコツとブランド力を育てる事に注力して頂ければと思います。あと、たまにはWebで服を買ってみましょう。

TAG

RELATED ARTICLES