2020.03.02 INTERVIEW

旧態依然なファッション教育に必要なことは?講師3名による座談会(前編)

by STYLE it.編集部

これまでSTYLE it.では、ファッションテックについて学べる学校や、トータルプロデュースを行ってくれる学校を運営している方を取材したりと教育の現場についても触れてきました。

そこで、それぞれファッション業界で活躍する傍ら教育にも携わっているお三方にお集まりいただき、「今のファッション教育に必要なことは?」をテーマにぶっちゃけ座談会を開催!今の学生の特徴や、専門学校の変えるべきところなど、たくさんお話していただきました。前編・後編に分けてお届けいたします。

(R→L)


深谷玲人さん:ファッションテックの領域で起業し、
生産管理の業務効率化や課題解決を図るシステム「AYATORI」を提供する株式会社DeepValleyを設立。ファッションスクールTFLで講師や文化服装学院の特別講師を務める。

深地雅也さん:企業のEコマースディレクション、コンテンツマーケティング、サイト内のコンテンツ制作を請け負う株式会社StylePicks代表。関西で服飾専門学校講師も務める。STYLE it.にて毎週連載を公開中。

吉田直哉さん:株式会社READY TO FASHIONの執行役員としてファッション業界の人材紹介をメインに、スナック&バー「BANQUET CIRCUS」の運営も行う。文化服装学院で非常勤講師を務める。

教養のない学生が多い

─ お三方とも講師としても活躍とのことですが、どのような内容を教えているのか教えてください。

深谷さん(以下敬称略):僕はTFL(Tokyo Fashion technology Lab)というファッションスクールで、ブランドディレクターコースの授業を持っています。ブランドを立ち上げたい、ファッションに関するビジネスをしたいという方に向けて、プレゼンテーションや事業計画の作り方など、初期に構築する部分を教えています。卒業した何割かの方は実際に起業したりもしています。

深地さん(以下敬称略):僕はファッションマーケティングの部門をメインに教えています。外にリサーチに行かせ、マーケティングでよく使われる3C、4Pなどのフレームワークに当てはめて競合やターゲットをプレゼンしてもらいます。Eコマースの要素も取り入れているので、ライティングやSNSについても触れています。

吉田さん(以下敬称略):僕がレギュラーで教えているのは、CDP(キャリアデベロップメント)というタイトルで、ファッション業界においてどのようにキャリアを作っていくのかというキャリア開発から、さまざまな職種の紹介、それらのニーズが今後どのように変わっていくのかを考えたりしています。学生であればあるほど、知っている職業の中からしか選択できないし、知らなかったりイメージだけで捉えている仕事が多いなと思っていて。各分野の職種の講師を呼んで、生徒と一緒にその職種について学んだり、一部を体験してもらうワークショップを行なっていて、PRだったらプレスリリースを書いたり、バイヤーを呼んだときは、オリジナル商品を企画したりしました。

─ みなさん教えている内容はバラバラなんですね。ファッション教育をしている中で課題だと感じる部分はありますか?

深谷:ざっくり言うと、教養がない子が多いなという印象です。学生でも簡単にビジネスを始められる反面、法や商標のリスクに関する知識がない子が多い。品質表示に関することなど“商品を売るには”で検索すれば出てくることですら知らなかったり。

深地:そうですね。ファッションの専門学校って入試という入試がないじゃないですか。なので、生徒たちの偏差値に差があるにも関わらず同じ授業を受ける。で、偏差値が高い子は全体の2割だったりするので、授業内容はマジョリティに合わせたもの。そうすると、頭がいい子からすると「え、まだ粗利とかやるの?」となるわけです。深谷さんは高卒でしたっけ?

深谷:高卒です。工業高校です。

深地:高卒で、深谷さんみたいにインプット量が多い人いないんですよ。大学に行く人はそれなりにインプットする習慣があるんですけど、専門学校はそういう習慣がない子たちが学生の猶予期間として選択しているんです。

深谷:それはたしかに核心的ですね。

深地:だから、本当は入試しないといけないんです。

吉田:いくつか専門学校がある中で、学生さんが学校を決めるきっかけってなんなんですか

深地:関西の事例で1番多いのはガイダンスですね。偏差値50未満の高校では、専門学校のガイダンスが多いんです。ガイダンスで専門学校の営業さんたちが高校1年生に向けて夢見がちな話をすると、ガイダンスを聞いた子たちは専門学校に行こうと思って2年生になっても同じガイダンスを聞く。3年生でオープンキャンパスに来てもらって入学してもらう。という流れが1番ベタな手法なんです。1年生の頃から聞いてる子は、他の情報をシャットアウトしてそこしか見なくなるんですよ。

深谷:受験しなくていいし、ギリギリまで遊んでいられますもんね。

深地:しかも、自分が苦手だった勉学じゃなくてファッションの勉強ができると思っているんですよ。でも理想と現実のファッションの授業って全然違うし、足元はもっと泥臭い努力が必要なものじゃないですか。そこを知らないまま就職して、「思ってたのと違う」「販売しんどい」となって離職するパターンが多いんです。

優秀な人材が集まりづらいファッション業界

─ なるほど。たしかに学生の頃はアパレルというとただただイケてるイメージでした。

吉田:その他の問題点でいうと、優秀な人材がファッション業界に集まりづらくなっていることですかね。元々ファッション業界って人気産業だったので、採用努力をそこまで必要としてこなかったんです。他の業界の方と話してると、IT系の会社さんは採用するために様々な努力をしていたり、企業のことを知ってもらう工夫を重ねているんですよ。世の中的に優秀な人材が採用しづらくなっている中で、採用力の差が出ている気がします。正直、日本のアパレル企業だと最近は明るい情報よりもネガティブな情報の方が目にすることが多いし、学生からしても業界に身を置くことに不安を感じてしまって、どんどん離れているんだろうなと。

深地:それも、かつてファッションに憧れていた専門学生が多かった時代は、労働環境が悪いなんてみんな知らなかったんですよ。それがインターネットの普及によりネットに上がったことで、みんな愕然とした。その印象が今も続いていて、学生のご両親と会うと未だに労働環境や給与水準の面で心配されます。でも僕らが新卒のときに比べたら全然よくなりましたよね。準社員で時給900円スタートとかの会社もありましたし。

深谷:僕、入社したとき準社員でした。

深地:昔よりはだいぶ良くなったけど、それでも産業別の給与水準で見るとファッション業界は全体の半分以下なんです。しかも、学歴がなくても入れるというイメージもあるので、学歴の低い人たちが保険として考えている気がします。

深谷:肉体労働するよりは夢もあるしかっこいいし、アパレルの方がいいってなりますね。

吉田:中途では結構お給料をもらっている人が多いですね。

─ そうなんですね。なんでそんなに差があるんでしょう?

吉田;他の業界にも言えることなんですけど、排他的というか、ブランド間の交流もあまりないので、相場でみたときに自分の価値を知らない人が多いんですよ。

深地:だから経営企画のポジションで異業種から引っ張ってきた人は新卒からずっと働いている人より年収が高かったりするんですよ。でも、辞めるのもはやい。

吉田:いろんな方にお会いして思ったんですけど、結局年収が見合ってない人はあまりいないというか。肩書きと給料が紐づくかはまた別なんですけど、業界の中にしか居ずに、世の中の相場を知らないのは能力の問題だと思うんです。他業界も含めて転職の相談を受けてきた中で、年収1億円の方がいたんですけど、そういう方は見えてる世界とか洞察力が全然違ってて。それぞれの年収って割と適正値になっている気がします。

深地:たしかに。あまり違和感を感じたことないかも。

フリーランスや独立が身近なものに

─ 今の学生の特徴や傾向はいかがですか?

吉田:フリーランスへの憧れがすごいのか、フリーランスや起業に関する質問・相談が増えましたね。でも、何かをやりたくてというより、ファッションの要素的な面でかっこいいとか、そういう人たちがSNSで目立っているから「ああいう働き方いいな」みたいな。

深地:独立したいという声は本当に多いですね。インフルエンサーブランドを立ち上げるみたいなノリできますよね(笑)

吉田:中には優秀でちゃんと考えている子もいるんですけど、さっき深地さんが仰っていたように、簡単に立ち上げられるが故に、起業すること自体が目的になっちゃっていて、誰のなにを解消するサービスや商品なのかというところまで考えてないです。

深谷:僕はいつもそういう生徒を論破してますね(笑)落ち込んで帰っていきますけど、絶対に続かないですもん。立ち上げることはできちゃうから、ここで伝えておかないとお金だけなくなって終わっちゃうので。

深地:そういう人に限って、就職したら現実をみてそのままサラリーマンに甘んじるんですよね。インフルエンサーがインスタグラム経由でブランド立ち上げて、成功してるように見えてるから同じようなことをやりたがるんですよ。

─ SNSで目にする人に憧れる気持ちすごく分かります…。昔より身近に感じるし、自分にもできるかもって思いますもんね。良くも悪くも。


前編では、ファッション業界の賃金問題や学生の意識の変化などをピックアップしました。後編では意外と知られていない、ファッション専門学校の体制について触れていきます。

後編はこちらから

旧態依然なファッション教育に必要なことは?講師3名による座談会(後編)

TAG

RELATED ARTICLES