2020.02.19 COLUMN

これは当たり前じゃなかった?アパレルの商習慣(小売編)

by 深地雅也

こんにちは、深地です。

業界の当たり前が、他業界から見るとおかしな問題だった、なんて事はよくある話でしょう。先日、そんなニュースが1件流れておりました。

 

婦人服のレリアンが下請いじめで勧告、総額23億円を負担させた疑い

内容は最悪なんですが、これ決して珍しい事態では無いのです。(一部では“下請けいじめではない”との報道も出ておりますが。)もちろん規模感や内容の酷さに程度はありますし、下請法に抵触しているかしていないかもありますが、筆者が過去勤務していた企業の周りでも不当な返品や値引きのような事案は発生しておりました。少し違うのは双方、共犯関係にあった事でしょうか。

 

契約内容は「買取り」でも返品が普通に起こる

筆者がいた業界は卸メインのアパレルメーカーでしたので、小売店・セレクトショップへの卸を手がけていたのですが、商品を卸す際に「買取り」や「委託」などの契約を結びます。

 

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詳しい内容は上記をご覧ください。「買取り」とはその名の通り、小売店側が商品を卸業者から仕入れることなのですが、シーズンが終わった後に残った在庫が返品される事がよく起こるのです。突然、前触れも無く返ってくる事もあれば、ショップのバイヤーと卸側の担当営業の間で事前に取り交わされている場合もあります。1000万円分発注する代わりに200万円分は返品枠として引き取る、といった感じですね。暗黙の了解のつもりで返品してくるショップもありますので、担当者が返品を断れば、セレクトショップのオーナーやバイヤーから怒りの電話がかかってきて、上司と無理やり話をつけて返品を通らせた、なんて事も起こっていたくらいです。仕入れ・バイイングって一体何なんでしょうね…。

 

在庫を残したくない場合に起こる「値引き」という措置

過去からこういった商習慣に慣れていると、小売側もリスクを高めたくありませんから、この事態から中々脱却できません。結果、卸側の担当者が代わっても同様の契約内容が継続されやすいのです。そして、こういった返品が常態化してくると、在庫を余らせたくない場合、「値引き」という措置を取るケースも出てきます。当初の掛け率から下げて納品する代わりに返品を回避するのです。結果として、粗利益は削られますが、返品による在庫増加は免れます。どちらがいいかはわかりませんが

これらの内容は、小売店と卸業者とのパワーバランスも関係するので、今回のレリアンのような事件も起こってしまう事があります。皆さんが知っているような有名セレクトショップが不当な返品をするケースもありますが、力関係によって強く言えない事もあるのです。

 

仕入れ先のメリットは何?

こんな話をすると「卸業者には何のメリットも無いのでは?」と思うかもしれません。しかし、卸側からすると「小売店に無理をさせ過ぎて破綻する」といった事態を回避する必要もあるのです。物が簡単に売れていくなら何の問題も無いのですが、小売店も在庫過多になりすぎると経営が傾きます。そうなるとお金払いが悪くなってくる、もしくは破綻するような事も起こり得るのです。破綻しても商品を回収できるならまだいい方で、最悪の場合はその商品をキャッシュに変えられ、別の支払いに回されたら最後、卸側は何も回収が出来なくなってきます。だからこそ、卸の営業担当者は小売店の状態を見極め、状況によっては返品を受け取るといった対応も求められる事があるのです。

上記はまだ綺麗な理由ですが、もちろん酷い理由もあります。それは、卸業者が「返品される事を前提として納品」することで、見せかけの売上を作り、PL(損益計算書)を良く見せる事が目的となっている場合。小売店側は突然商品が届くので困惑しますが、事実上、返品が容易なのですぐ送り返します。しかし、決算月をまたぐ事で、卸業者は架空の売上を作っているのです。普通に粉飾ですね。売掛金を見れば明らかなんですが、こういう事を今だにやっている企業も存在するのです。


物が売れなくなると何処かに必ず歪みが必ず出てきます。その際に、負担をどちらか一方に押し付けて、自社だけ潤わそうと思うからこのような事態が起きるのです。今、利益が上がっているように見える企業でも、どこかがしわ寄せを受けているかもしれません。それは今回のような在庫問題かもしれませんし、従業員の給与かもしれません。健全な経営や健全な取引きを継続しようと思えば、売上をあげる以外に方法は無いのです。

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