こんにちは、深地です。
最近何かと話題のスーツ業界。特にオーダーサービスが乱立していて、パターンオーダーでスーツをお作りになられた方も多いのではないでしょうか。
そんな盛り上がりを見せるスーツ市場ですが、
スーツ市場もこんだけ落ち込んでたら、オーダーが多少伸びようがしんどいな。しかも大手がどこも参入してきてるし…。 pic.twitter.com/fYBpbyIDH4
— 深地雅也 (@fukaji38) August 28, 2019
市場全体を見ると実は右肩下がりの状況です。理由としましては、スーツを一番購入していたであろう「団塊世代の定年退職」や「スーツスタイルのカジュアル化」が挙げられるかと。人口ピラミッドを見ても生産年齢人口の減少は明らかで、スーツブランド各社は対策として女性用スーツを強化したり、カジュアル衣料品に手を出したりしています。後者はことごとく失敗しているようで、既に撤退もちらほら見られますね。
その中で、堅調に推移しているのが冒頭でお話したオーダースーツ市場。採寸専用の店舗や出張採寸、それも全てWeb上で予約が可能だったりと、パターンオーダーを発注するハードルが下がっていますし、価格も安いものだと30000円程度で購入できますから、2プライススーツとさほどお値段も変わりません。「見られ方は気になるけど、何を選べばいいかわからない。」というニーズを持った企業の管理職の方中心に人気を集めているようです。
ただこの需要、既存のスーツ需要が置き換えられたものなので、スーツ市場全体が盛り上がっているという訳ではないようなのです。
オーダースーツはレッドオーシャン?
先述した通り、オーダースーツ市場に参入する事業者は非常に多く、生産背景や人材などのリソースを活かし、大手がどんどん参入してきています。既存のスーツ量販店以外でも、採寸専用店舗を全国に50店舗以上持つコナカの「difference」や、採寸師が出張採寸してくれる「カシヤマ・ザ・スマートテーラー」。それ以外にもワールドや三陽商会などの百貨店アパレルが参入し、独自のサービスを展開して顧客を獲得する企業が増えてきました。(すっかり忘れ去られてますがZOZOSUITで採寸という手法もありましたね。)一方で、早い段階でオンラインのオーダースーツに着手していたD2Cブランドの【Fabric Tokyo(ファブリックトーキョー)】も外せない存在でしょうか。
レッドオーシャンなオーダースーツ市場ですが課題はCPA、つまり顧客獲得単価にあります。採寸データを獲得さえすれば、2点目以降のリピート率が高くなり、ユーザー側も発注が簡単になります。だからこそ、各社採寸データを取得する際には採算度外視のような施策を打っている訳ですね。ユーザーデータの獲得と生産背景の担保が肝になりそうです。
大手ですら撤退…。オーダースーツ市場めっちゃ熾烈やな。。
/ AOKI、低価格のオーダースーツブランド「アオキトーキョー」わずか1年で事業終了 https://t.co/Qrl77mUA38
— 深地雅也 (@fukaji38) January 26, 2020
そしてここにきて、まさかの大手紳士服メーカー「AOKI」がオーダー事業からの撤退。売上は順調に伸ばしていたようなのですが、社内の方針なのでしょうか。顧客獲得単価が高くつくせいか、スーツのオーダーサービス単体だと赤字というお話はよく耳にします。いかにリピーターを増やすかが勝負なのですが、競争も激化しそうな状況を鑑みて早期の撤退を決断したのかもしれませんね。
小規模ブランドに勝機?
そんな中、小規模ながら利益をあげるオーダーサービスが存在しているのをご存知でしょうか。
上記は男性のインフルエンサーが展開するオーダーサービスで、大手のブランドと比較すると規模感は劣るものの、しっかりと利益を生み出しているようです。(しかもフルオーダー)男性インフルエンサー自体、希少価値が高いのですが、まさかのブランドビジネスの展開。そして、その中でも難易度が高いオーダースーツをされている事に驚きました。インフルエンサーが展開するメリットとしては「憧れの人に採寸してもらえる」という体験価値もあるようで、ブランドとして理にかなっていますね。
インフルエンサーのファンをブランドアカウントに送客しているのですが、商品が欲しい人とそうでない人を明確に分ける意味もあるようです。Instagramが完全に顧客管理のツールになっています。
スポーツ選手が顧客にもなっていて、ブランドロイヤリティも上がりそう。
生産はどうやってるのか?と不思議なんですが、有名ブランドの生産も請け負う企業(国内生産が多いようです。)と組んでやっているようです。フォロワー数からどの程度の売上が見込めるかは算出しているようですが、生産背景をクリアしているのが一番すごいですね。 実はこういった小規模ブランドを運営する男性インフルエンサーが
大体が販売開始から3時間以内には商品が完売するらしく(1型30〜50点、トータルで数百点ほど仕入れしています。)、中には販売時間にアラームをセットして、携帯に張り付いて準備している顧客もいるそうです。こういう事例を見ますと、スーツがどうこうというより、欲しいと思わせる事が何より大事だと思い知らされます。購入しているエンドユーザーも、「スーツが欲しい」が根幹にある訳ではなく、「この人たちのようになりたい」が購買の理由になっているように思うのです。もちろん小規模だからこそできる手法ではありますが、「欲しい商品を作る」という当たり前の事を忘れずにいたいものですね。