2020.01.22 COLUMN

そのビジネス、昔からありましたよね?実は新しくないD2C

by 深地雅也

こんにちは、深地です。

先日、サンフランシスコ発祥のD2Cブランドである【allbirds(オールバーズ)】が原宿に出店したとの事で早速行ってきました。

とりあえず一足購入してみたのですが、「世界一履き心地が良い」と言われるスニーカーブランドだけあって軽くて柔らかく、確かに快適です。(インターネット上では賛否両論ありますが。)

筆者はスニーカーマニアでは無いので製品についての所感は割愛しますが、マットレスブランドの【Casper(キャスパー)】が上場したりと、2020年になってもD2Cが市場を湧かせています。D2Cに関連する書籍も出版され、その定義についての議論も交わされているのをWeb上でよく目にするようになりました。しかしよくよく聞いておりますと、

「その内容って過去からありましたよね?」

と思われるものが非常に多いのです。これはD2Cに限った事ではなく、全く新しいように感じるビジネスが、実は過去からあったものを言葉を変えて真新しいように喧伝しているものが多く存在します。そこで本日はD2Cを含む「実は過去からあったビジネス」についてピックアップしてみたいと思います。

 

D2CSPA

Volha Flaxeco

まずD2Cというワードですが、既存ブランドとの違いで語られる項目は下記が多いのではないでしょうか。

・オンラインからスタート

・直接販売

・ソーシャルメディアを使ってコミュニティ形成とコミュニケーション

・データドリブン

一見新しい取り組みのように見えるこれらの内容、アパレルにおいて実はオフラインでも過去から行われていました。直接販売に関してはSPAspecialty store retailer of private label apparel)が1社で企画・製造から販売までを既に行っております。むしろ、SPA全盛の今の時代、メーカーと小売店が別会社であるという認識の方が少数派でしょう。D2Cの定義を聞いて、「それSPAと何が違うの?」と思ったアパレル民も多いのではないでしょうか。

コミュニティ形成は、過去古着屋によく見られた手法ですね。今のように古着屋がチェーン展開するケースも少なかった時代、個店ベースでショップを中心にコミュニティが形成され、口コミでショップの情報が回ることもよくありました。古着好きの中で評判の良い店の情報を収集し、店主と仲良くなり再来店する、という事も20年前くらいは一般的でした。

ユーザーデータの活用も、店長がショップのオーダーをする際にお客の趣味嗜好を理解し、それに合わせた商品をオーダーしたり、顧客の来店頻度や購入履歴を把握した上で提案内容を変えたり、ご連絡をしたりと、アナログながら実行はされていました。それがデジタルに置き換えられ、属人的だった業務が再現可能になった、という見方が正しいのでしょう。

最近では【Snow Peak(スノーピーク)】というアウトドアブランドが、「スノーピークウェイ」というイベントを催して、アウトドアイベントを顧客と楽しみながら、製品に対する意見をヒアリングしたり、顧客同士の交流を促したりと、コミュニティを形成すると同時に、顧客からの意見を製品の企画に活用するという動きも見られますので、D2Cだけの手法でないようにも思います。

 

ブランドのメディア化?オウンドメディア?

D2Cだけに止まらず、昨今のブランドでよく取り組みが見られる「ブランドのメディア化」や「オウンドメディア」ですが、これは一部のブランドが独自コンセプトの元、Webメディアを運用したり自社で雑誌を制作・出版し、ブランドの世界観を伝える役割を持たせている事から言われています。これも過去を遡ると事例はいくつか出てきます。

 

ルイ・ヴィトンから学ぶブランドの「コンセプト」と「歴史」の重要性

 

こちらの記事にも記載していますが、ルイ・ヴィトンでは100年以上前にトランクに関するエッセイが出版されており、現在でもトラベルブックが刊行されています。メディアを通して世界観を伝えるという動きはこんなにも以前からあったのです。

また、コム・デ・ギャルソンでは「Six」という自前のメディア(オリジナルカタログ)を1975~87年まで発行していました。ブランドが発行するルックブックというより、ビジュアルメインのオウンドメディアといった位置付けでしょうか。”既存の雑誌ではコム・デ・ギャルソンの表現が十分ではない。”という理由だったようです。オウンドメディアという言葉は無かったものの、それに近しいビジネスは過去からあったようです。

 

オムニチャネル?OMO?

Jacek Dylag

オンラインで商品が売買されるようになり、改めて店舗とECのあり方が見直されています。店舗とECをシームレスに捉える考え方を「オムニチャネル」だとか、オンラインとオフラインを融合するのをOMOOnline Merges with Offline)だとか、この時点で違いがよくわかりませんね。しかしこんな最近の言葉ですら過去、「クリック&モルタル」という近い意味の言葉があり(「オンライン店舗と実店舗を有機的に結び付け、相乗効果を狙う」という意味。)、ファッションビジネスの検定試験にも載ってるくらいなのです。

こういった新しいワードが生み出される度に、アパレル企業の上層部では「これからはオムニチャネルだ!」とその意味をよくわからないまま指示が飛びますので、現場のEC担当者が振り回されてしまったりしているようです。新しい言葉の影響力は中々侮れませんね…。


インターネットが普及し、あらゆる事がオンラインに置き換えられてはいるものの、その本質は変わってない事が多いです。ECでは購入の「リピート率」やWebサイトへの「再訪率」が大切だと言われていますが、これも店舗では過去から販売員さんがアナログで集計しているものです。小売を熟知している人からしたら「それって何が新しいの?」と思う事もしばしばあるようで、新しいワードが生まれた時によくわからないまま踊らされずにしたいものですね。

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