2020.01.06 COLUMN

百貨店が「オワコン」と言われるようになった4つの理由

by 深地雅也

こんにちは、深地です。

皆さま、年末年始のセールにはもう行かれましたでしょうか?

最近は初売りセールの日程がどんどん前倒しになり、12月末から半期のクリアランスセールをスタートさせる商業施設も珍しくありません。もはや初売り=セールスタート日ではなくなってますね。年始の風物詩である福袋も、筆者の時代とは違い、中身を見せるのが主流になってきたりと、その様子は10数年前とは大きく変化しています。

セール時期の前倒しの件、過去大きく影響を与えていたのはやはり百貨店の存在でしょうか。筆者が新卒で入社した15年ほど前、初売りは既に1月2日からスタートでしたが、当時の40代の上司曰く「我々が若手の頃は2月がセール時期だった」と仰られていました。特に百貨店が隆盛を誇っていた1990年代は、物があれば売れた時代で、SPAのプロパー消化率が90%を超える事も珍しくなかったそうです。そんな時代ですから在庫が余る事もなかったのか、セールをする必要性もそれほど無かったのでしょう。それが今や、アパレル市場は供給過多になり、物が余る=セールしないと売れない状況に陥っています。セール前倒しの戦犯は、百貨店からSCに、そして今はECモールがプロパー時期関係なく、毎日のようにタイムセールやクーポンを撒いている状況ですね。

過去、そんな流通の中心であった百貨店ですが、現在若者を中心に百貨店でお買い物をする人の数は減っています。それは百貨店全体の市場規模の減少を見れば明らか。ファッション系のメディアでも百貨店が「オワコン」であるかのような報道が目立ちますし、この20年で一体どんな地殻変動が起きたのでしょうか。年末年始暇なのでの勉強がてら、その中身について考察してみる事にしました。

 

消化仕入れによる弊害


Charisse Kenion

よく様々なメディアで報じられている「消化仕入れ」ですが、これがもたらす弊害って結構あるのです。

まずは簡単に消化仕入れについてのおさらいですが、百貨店とブランドの取引内容は大きく分けると「消化」「委託」「買取」の3つ。これはセレクトショップと同様、「掛け率」で取引されます。例えば、とあるブランドが月間1000万円の売上だったとします。この時の取引内容が、「消化で掛け率が70%」の場合、下記のような内容になります。

 

1000万円 × 0.7 = 700万円(ブランドの取り分)

 

つまり、この時の百貨店の取り分は300万円になります。更に消化の場合ですと、残った在庫はブランド側へ返品されますし、店頭の販売員さんやショップの什器・内装費用はブランド持ちになります。では何が「仕入れ」なのか?それは、消化仕入れの場合、商品が百貨店に送られる際に、商品タグの他に百貨店のタグも付けられます。これは百貨店に商品が送られた段階で、それは名目上は百貨店が仕入れた商品になるのです。そして売れなかった分は、期末に「返品」という形でブランド側へ送られるという流れです。

これに対して「委託」ですが、百貨店にはもちろん、百貨店が雇用する販売員さんもいらっしゃいます。百貨店内にはブランドが運営するショップ以外に、百貨店側が運営する「自主編集売り場」というところがあるのですが、そこで販売している人たちです。この売り場にブランド側が商品を送り、百貨店の販売員さんに販売してもらうのが「委託」になります。この場合、掛け率はやや上がり、百貨店側の取り分が増えます。その代わり、ブランド側はショップや販売員を用意する必要がないのでリスクは軽減されます。

最後に「買取」ですが、これはセレクトショップとブランドのやり取りと一緒ですね。

東コレブランドの破綻の原因は?─ビジネスモデルをわかりやすく解説─

買取の商品が並ぶのも、先述しました「自主編集売り場」になります。

この商習慣により、百貨店はただのテナントのようになってしまう訳ですが、本来であれば目利きや集客といった要素が百貨店の強みにならないといけないはずなのです。百貨店のECが中々うまくいかない理由も、このように在庫リスクを取らない事が1つの理由かもしれません。ブランド側も、売れるかどうかわからない百貨店のECに、消化のままで商品を預けるのは機会損失のリスクを大幅に上げる事になります。商習慣が今の時代に合わなくなってきていると言えそうですね。

 

ポイント・優待の連発

最近の若者にはあまり印象が無いかもしれませんが、百貨店にはポイントアップの日がたくさん設定されていたり、「優待」と呼ばれる割引される日が毎月のように存在します。これって何かに似ていると思いませんか?

そう、ECモールです。今では割引の温床となっているECモールですが、百貨店でもポイントアップや優待、または「催事」と言われるセールがどの時期にも開催されているのです。

もちろん、一部のラグジュアリーはこれに参加していませんが、多くのブランドがこのような施策に乗っかり、売上を確保しているのが実情です。このような事ばかり実施してしまうと、百貨店と言えどプロパーで買ってくれる人の数はどんどん減っていきます。セール時期の前倒し以外にもこのような事は既に起こっていましたし、セールも中だるみになれば再マークダウンは当たり前。売上が良くないブランドは福袋を増やしたり、従業員食堂でセールを行うこともしばしばありました。

当時から、売上対策と言えば「売り場面積を増やす」「営業日数・営業時間を増やす」「セール」くらいしか発想が無かったので、ここもECモールのやってる事と大差ありませんね。

 

商業施設の乱立

流通の中心が百貨店からファッションビルへ、そしてSC・駅ビル。今ではECと、主要チャネルはこの数十年で大きく選択肢が増えました。毎年のように開発される新しい商業施設。

全国のSC数・概況

流石にここ数年はその勢いは衰えましたが、リアル店舗の数は既に飽和しているのか、大手アパレルの多くが既存ブランドの出店を抑制。スクラップ&ビルドに切り替え始め、ECを強化することで利益率を高める方針に打って出ています。これだけチャネルが分散してしまうと、当然ながら百貨店に行く人の数は減ってしまいます。皆さん、自分の生活圏にあるショップを優先しますから、余程百貨店に行くことにロイヤリティを感じていない人以外、来店頻度は下がってしまうでしょう。

 

百貨店アパレルの衰退

中価格帯ブランドが課題に挙がりやすい百貨店ですが、その中でも「百貨店アパレル」と呼ばれる大手アパレルの規模感が年々下がってきています。ワールド・オンワード樫山・三陽商会・ファイブフォックスなどなど。再編して規模拡大しているように見える企業も中にはありますが、百貨店にチャネルを依存していた企業がどんどんと年間売上高を下げているのですから、百貨店自体の衣料品部門が減少傾向なのもよくわかります。数年前からセレクトショップやファストファッションまでもが百貨店に入ることも珍しくなくなってきましたが、衣料品だけでカバーする事が難しいのか、中の比率を変えて、コスメや飲食を強化する方針の百貨店も増えてきたようです。

中価格帯ブランドが売れなくなった、とまでは言いませんが、それでも低価格商材とラグジュアリーの二極化は徐々に進行していますし、若者を中心に百貨店アパレルの認知が大きく下がっているのは事実です。


百貨店が衰退した理由について思い当たることを抜き出してみました。とは言え、まだ1兆円を超える売上を叩き出す三越・伊勢丹や、10年前と大差ない売上を維持する高島屋など、流通における存在感はまだまだあります。百貨店側の課題としては、若い層へのリーチとインバウンド頼みの売上でしょうか。事業の縮小を免れるのは非常に難しいと言わざるを得ませんが、規模拡大を追わずとも強い百貨店の姿を取り戻してほしいものですね。

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