2019.12.18 COLUMN

費用対効果はどうなの?担当者が知っておきたいECモールの活用法

by 深地雅也

こんにちは、深地です。

アパレルECでは常に話題になりやすいECモール問題。ZOZO、Amazon、楽天などなど、プラットフォーマーの取り組みや変革は、業界にインパクトを与えがちです。

EC担当者の間でもいつもテーマに上がるのが「ECモールをどう活用するか?」ですが、組織によって捉え方が違いますので、積極的に活用するところもあれば、徐々に撤退していく方針の企業もあり、何が正解かは非常に判断が難しい状況です。

本日はそんな悩めるEC担当者に向けて、筆者の観測範囲からわかるECモール活用についてお伝えできればと思います。

 

ECモールの料率(手数料)をおさらい

Taras Shypka

モール活用でまず議論にあがりやすいのは当然ながら「費用対効果」。つまり手数料がどの程度かですね。有名なのはZOZOTOWNで、売上の35%が手数料と言われています。これはブランドとモールのパワーバランスによって変動しますし、AmazonやSHOPLISTのようなその他のモールでも似たような条件が見られます。(楽天はプランが選択できますし、ヤフーの出店費用はそんなにかかりません。この2店は広告がキャッシュポイントのメインになります。)ではこの「料率」と言われる手数料はどう判断したらいいのでしょうか?

料率が仮に30〜40%として、「高くない!」という方々の意見は主に下記のようなものです。

・ささげ業務、販促費、物流費などの販管費を考えるとトラフィックも担保されるし高くはない
・百貨店の掛け率と大差無い

販管費として考えると、上記のような言い分はよくわかります。売上が伸びればモールとの交渉力も上がりますから、恐らく料率もどんどん下げていけるでしょうし、その仕組みは百貨店と同様かと思います。売上が年間で数十億円なのに30〜40%の手数料を取られていたとしたら流石に高いですが、料率の交渉次第で利益は確保できるでしょう。

 

百貨店の率は?

百貨店の消化仕入れでの掛け率がECモールの手数料と大差が無いという意見、これもブランドと百貨店のパワーバランスによって変動しますが概ね間違ってはいないでしょう。例外としては、ルイヴィトンやシャネル級のハイブランドのように売上規模が大きく、ブランド自体が集客装置になるような場合、掛け率は大幅に下がります。但し、百貨店はその上、販売員の人件費が嵩んできますし、集客力はやや陰りが見えているので個人的にはECモールより販管費は割高な印象はあります。(SCだと売上の20%前後が家賃比率。値引きなどの優待は百貨店持ちです。)

しかし、リアルにはリアルの大きな利点があります。百貨店を含むリアル店舗の大きなメリットは消化率。これ、比較するとwebとは結構差があります。筆者の観測範囲になりますが、ECモールでのプロパー消化率は30%前後しかなく、アウトレットを持っていなければ消化するのに結構苦労されている企業が多いです。同じブランドでもリアル店舗のプロパー消化は5060%前後くらいあったりしますから、在庫消化の観点からも判断する必要がありますね。

 

主な販促施策

何故、ECモールはプロパー消化率が低いのでしょうか。ECモールをよく使う人ならおわかりでしょうが、それは「セール・クーポン施策」が非常に多いからです。それに慣れているモールの顧客に売るのなら、それが一番の販促施策になってしまいます。(クーポンは「販促費」に当たるから、これで値引きしてもプロパー扱い、という言い分は無視します。)

上記のような感じですね。問題は、これらの値引き負担は当然ながら全てブランド側になります。ECモールに対しての手数料が固定ならそこまで悪質でもないのですが、売上に対する率の場合、値引き施策はECモールにとってメリットしかありません。売上が伸びれば伸びるほど、ECモールの取り分が増えるのであれば、モール側は当然セールやクーポンをどんどん奨励します。その結果、ブランドの売上も伸びますが粗利はどんどん削られます。

 

モールのお客は自社ECで購入するのか?

もう一つの争点になりやすいのが、ECモールの費用を販促費として見るというもの。つまり、モール出店すればブランド認知が高まり、最終的には顧客として育成する事ができるのでは?という考え方。認知が高まった後で自社ECに送客し、LTVを上げていくつもりでしょうか。これについては、もちろんそういうお客さんもいるかもしれませんが、先述したようにモールのお得感は非常に強く、ポイント還元やプライシング中心の販促施策の前では自社に送客できる顧客は限られてしまうのが現実です。しかも、ZOZO、楽天、Amazonに関しては外部リンクを禁止されており、顧客の流出は防がれています。(ヤフーは外部リンクOKです。)ブランド認知は上がるかもしれませんが、そこから自社ブランドのロイヤリティを上げていけるかコントロールするのは、かなりハードルが高いのです。

 

フルフィルメント事業者の料率はだいたいどのくらい?

「いやいや、とは言っても自社ECも販管費が結構かかるじゃないですか?」

というご意見もあります。ブランドによって、ここも下げていく事は可能ですが、売上規模が大きくないと効率は上がっていきません。ちなみに大手アパレルは、自社ECの運用をフルフィルメント事業者に依頼しているケースが多いのですが、その場合も同様に料率が設定されています。弊社で確認しているところでは、大体が売上の2030%程度。作業項目としてはささげ業務、物流、日々の更新業務(記事はニュースの更新くらい)といったところでしょうか。LP作ったり、特集記事書いてもらったりというコンテンツ制作は別料金になってる場合が多いです。販促費、つまりweb広告も別途で徴収しています。どれくらいの費用をかけるかは、売上規模やブランドの方針・属性によって大きく異なります。

自社EC運用の一番大きなメリットとしては自前の顧客リストを増やしていけるし、ブランドロイヤリティを高めていける事ですね。ブランド戦略としては一番重要な位置付けになるのですが、アパレルEC黎明期の頃、自社で運用するブランドはほとんど無く、その時点でモールに潜在顧客を囲い込まれているという歴史はあります。だからこそ、自社ECが伸びてきたらECモールは撤退するというブランドが増えてきているのではないでしょうか。

 

アウトレットとしての活用は合理的


Parker Burchfield

ブランドによっては、ECモールをアウトレットとして活用する場合もあります。販促施策が、値引きのようなプライシングメインだからこそ、シーズン型落ち商品を捌くのに適していますし、ECなら実店舗を増やす必要もありませんから販管費が増大する事も無い。アウトレットは人材の採用面でも苦労しますが、ECならそういった苦労もありません。ECの特性と非常に相性が良いので、自社ECで利益率を高め、ECモールで在庫を捌けるという分け方は非常に合理的なんではないでしょうか。

 

結局ECモールは出店すべきなのか?

長々と書きましたが、結局はブランドの置かれている環境と企業の方針次第にはなります。「社内リソースが足らない」場合や「料率で優遇してもらえる」ケースだと、ECモール出店もありだとは思いますが、既に「ブランド認知が高い」「自店にも顧客がたくさんいる」場合は、ECモールに顧客を囲い込まれてしまいますのでオススメしません。

ECはその特性上、ブランドが確立されている場合でないと売上を短期的に上げていくのが難しいものです。そして既に知名度があって店舗もあって、顧客がたくさんいるブランドからするとわざわざECモールに顧客データを取られてクーポンやセールで囲い込みされる方がデメリットが大きい。(しかもセールやクーポンはブランド負担)つまり、既にブランド認知が高い場合、わざわざ自分たちでECモールでの値引きの負担をして料率を取られながら販売しているという事になります。しかも顧客リストが取れません。

だからこそ料率の交渉が重要で、これが下げてもらえるなら出店するメリットも大幅に出てくるかと思います。なので今後、アパレル大手がECモールを離脱するかどうかはこの「料率の交渉」が大きな争点ではないでしょうか。


大手アパレルでもECモールの売上があまりにも大きくなりすぎると、流石に即時撤退という施策は取りにくいでしょう。とは言え、今のクーポン・セール施策中心の運用になると、ブランド側も粗利が削られ疲弊し続けるだけです。双方が今後の業界の未来を見据えた上で、ブランドが成長していける最適な方針を打ち出していってほしいと願っております。

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