2019.11.06 COLUMN

なぜ、アパレル企業はブラック労働と言われてしまうの?

by 深地雅也

こんにちは、深地です。

ファッション・アパレル業界にて根強く残る「労働環境問題」。先日も【INGNI(イング)】というブランドでとある問題が発生していたようです。

こちらのツイートに記載があるような、「アパレルがどこも同じ状況」というのはミスリードですが、労働条件が悪くなりやすいのはよくわかります。給与水準は徐々に上がってはいるものの、課題はまだまだあるでしょう。どの業界でも少なからず同様の問題はあるのでしょうけど、ファッションは華やかなイメージがあったり、また普段から自分が着用する衣料品と直結する事からも、この手の話題には多くの方が敏感になっているのかとも思います。

筆者も10数年この業界にいますが、様々な要因から、所謂「ブラック労働」が発生しているのを目の当たりにしております。では何故、ここの問題が解決されないのでしょうか。

 

デベロッパーの営業日数・営業時間の問題

労働環境が悪化する原因の一つは、ブランドが出店している商業施設。つまり、デベロッパー側にあります。特にSCは年中無休のところが多く、お正月も元旦から営業が当たり前。むしろ福袋販売などで集客はいつもより多いでしょう。しかし、商業施設が年中無休とはいえ、社員1人あたりの年間休日が決まっているのに、何故労働環境が悪化するのでしょうか?

それは、慢性的な人手不足が原因です。営業日数が増えると、単純にそこをカバーする為の人員が必要になりますから、人手が足りていなければその皺寄せは社員にいきます。人気ブランド、もしくは都心のショップであれば人手も担保しやすいのですが、環境が違えば働き手は当然少なくもなります。販売員の数を揃える事ができなければ、必然的に社員一人当たりの休日は減らさざるをえません。デベロッパーからしたら、ショップの人件費はブランド側の費用なので、売上を上げる為には営業日数を増やしたいというインセンティブも働き、改善の傾向が見られないのが現実なのです。

 

タイムカードを打った後に長時間のミーティング


Freshh Connection

ショップの閉店後に、売上対策などの「ミーティング」を長時間行っているブランドがいくつか見られます。閉店時間はデベロッパーによって変わりますが、大体が20時〜21時。閉店作業を終えてミーティングを始めれば、終電時間近くまで伸びる事もしばしばあります。しかも、タイムカードは打った後ですから当然給与は発生しません。残業代を支給している企業もあるとは思いますが、その多くは「定額制」になっており、働いた分というより、月額で決まった金額を残業代として設定しているところが多いのです。その結果、長時間労働が横行しても給与水準は上がらず、肉体的にも精神的にも疲弊する社員が増えています。これに関してはブランド側の管理の問題もありますから、デベロッパーだけの責任とは言えませんね。

 

未だに残る「ブランドへの憧れ」を利用する風潮

そんなに大変なら辞めればいいのでは?と仰る方も多いでしょう。しかし、そういったマインドになれるならこのような問題は早期に根絶されています。辞めない理由は人それぞれあるでしょうけど、未だに「ブランドへの憧れ」を利用するケースも見かけます。「このブランドが好きならもちろん頑張れるよね?」といった内容の事を上司から言われるという相談も何度か受けた事がありますが、きっとその上司も同様の教育を受けてきたのでしょう。前時代的と思われるかもしれませんが、意外と根強く蔓延っている悪しき習慣です。

 

企業によって制度が違う「制服の支給」


Keagan Henman

そんな労働環境の割りに給与が安いと言われるのがアパレル業界ですが、そう言われる所以は、何も総支給額だけの問題ではありません。店頭で着る為の服を購入しなければならず、手取りが減ってしまう問題が付いて回ります。そして、服をたくさん買わなければならない理由の一つが「制服の支給」問題です。販売員は店頭で毎日、ブランドの服を着用しますが、満足に制服を支給してくれるブランドの方が少ない印象があります。12ルック程度は支給してくれるブランドは多いでしょうけど、週5回程度は売り場に立つのですから、それでも足りません。また、ブランドがシーズンを6ヶ月として設定している場合、6ヶ月に12ルック程度の制服を支給されたところで足るはずもなく。結果として、ブランドの服をたくさん購入せざるをえないのです。(多少の割引はありますが。)


こういった状況は、過去からずっと続いてきていますが、中々改善されません。ソーシャルメディアのおかげか、今回のINGNIのような事件が発生した場合、悪評が回るスピードが非常に早く、ブラック労働はブランドにとって大きなリスクになってきています。悪評が広まれば、今後は採用に影響があるでしょうし、給与水準も就活サイトで確認が容易ですので、条件が悪いブランドはどんどん敬遠されています。採用で困った企業は、給与水準を上げざるをえず、最近ではアパレルのアルバイトでも時給を1100円程度に設定する企業が増えてきたのも事実です。このようなインターネットによる自浄作用を促す為にも、アパレル従事者一人一人がしっかりと声をあげていく事が重要なのです。ブラック労働の犠牲者になる方は、恐らく企業からすると実直で真面目な方が多いと思います。そんな方ほど、声をあげず自分を追い込んでしまうかもしれません。しかし業界全体の為にも、おかしい事に対して声があがり、労働環境の自浄作用が促進されるような環境が実現される事を切に願っております。

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