2019.11.01 INTERVIEW

商品は売らないのがトレンド。トップセラーに聞く消費者の“買い方の変化”

by STYLE it.編集部

アパレル業界では「ECの普及により店舗での売上が下がるのではないか」「物が売れなくなっている」などネガティブなワードを耳にすることが多くなってきました。でも、本当に売れなくなってしまったのか、店舗や販売員はもう必要ないのでしょうか?

アパレル・IT業界で働く人々の働き方・想いを紹介していく連載「私のファッションスタイル」。第10回は、リテールコンサルタントをはじめファッション専門講師を行なっていたり、STYLE it.にコラムを寄稿していただいている深地さんと共にアパレル販売員を応援するメディア【Topseller.Style(トップセラースタイル)】の主宰を務めたりと、幅広く活躍されている四元亮平さんにお話を伺ってきました。

稼がない仕事がしたかった

四元さんが主宰を務めている、販売員のためのメディアTopseller.Style


─ 専門学校の教師・トップセラーを始めたきっかけをそれぞれ教えてください。

30歳で輸入貿易の会社を作ってOEMをしたり、店舗運営の代行をしたりしていたんですけど、数が増えていくうちに僕自身が経営に関する仕事しかできなくなってしまって、面白くなくなっちゃったんですよ。お金を稼ぐことも嫌になってしまって1人で自由に働きたいなと思い販売に関するブログを書いていたところ、深地くんからTwitterで「学校の先生やってもらえませんか。」みたいな内容のリプライが飛んできたことがきっかけです(笑)

トップセラーも、深地くんからwebで教育をやりたいと言われたことがきっかけですね。先生を引き受けたタイミングで「自分の空いた時間を使って、みんなの役に立つけど利益をあげなくていい仕事がしたい」と思い、トップセラーを立ち上げました。お金を稼ごうとしてないからこそ続けられたし、自分も周りにいる人も変わったし、そこから仕事にも繋がっているので。そういった意味で、昔師匠に言われた「稼がない奴が1番強い」という言葉が間違ってなかったなって気づけました。

自称「日本で1番webに強い販売員」

─ 学校では、どんな内容の授業を行なっているんですか?

販売に関する授業を行なっているんですけど、内容としては販売経験のない子も多いので顧客心理から教えるためにも擬似ロールプレイングを行なっています。内容としては、

1.生徒自身が顧客(ペルソナ)になるために、自身が買い物をする理由や買いたくなる・ならない接客内容などを書き出す

2.生徒が実際にいいと思っている店舗に、2,3人のグループでいく

3.1人が事前のペルソナ設定に基づいて接客を受け、残りの生徒は周りで聞く

4.上記接客を受けた生徒がお客様役。聞いていた生徒が販売員役として再現した擬似ロープレを実施する。

こうすることで顧客のインサイトが分かるだけでなく、その後は販売員に対して「どうしてこんな風に言ったんだろう。」など振り返ることができるようになるので、擬似体験を積ませるようにしています。お客さんが買い物をする理由がわからないと、セールスのテクニックを覚えても小手先のものになってしまうので。

買い方のトレンドが変化してきた

─ 今と昔で、お客さまの変化はありますか?

“買い物の仕方”が変わったと思います。20年前は安い商材が少なくて、買い物をすること自体がリスキーだったんです。1着の金額は高いのに、似合わないかもしれないという博打的な部分が多くて、歳をとるごとにファッションにお金をかけなくなってしまうんですよ。そのリスクを負いながら服を買い続けた着る経験値の高い人や、1日に4,5回着替えたり試着ができる販売員さんがオシャレだったんです。

そういう時代の中で、Forever21などのファストファッションが日本に入ってきたことにより、一般人が買っても失敗するリスクが下がり服を気軽に切られることで経験値が上がったため、相対的にみんながオシャレになりました。

次に、メルカリの登場。最初業界の人たちはメルカリのことをヤフオクの延長だと思ってたので見向きもしなかったんですけど、結果として二次流通という新しい流れができました。ハイブランドの10万円の商品を買っても、8万円で売れるようになったことで、2万円のリスクで買えるようになったことはすごく大きいと思います。

そして、サブスクですね。今ファッションに限らず、Netflixなど継続課金型のサブスクリプションがトレンドじゃないですか。生活の中で当たり前にサブスクを利用している若い子たちからすると、基本的に物販小売業の売り切り型の商品を買うことが怖くなると思うんですよ。

─ なるほど、外的要因によって消費行動が変わってきているんですね。

そうなんです。そこで今僕のクライアントや企業に提案しているのが、“個人売り予算や店舗予算をなくすこと”。販売員の評価を売上に設定していると、販売員はお客さまに対して物を売りに行っちゃうじゃないですか。ただでさえリスクが高い物を買おうとしているのに、評価のために売られそうになっていると感じて今まで以上に肌感覚で拒否られると思うんです。そこで、今テスト的に行なっているのが、“ライク”を評価基準にすること。つまり、お客さまに「どうすればありがとうって言ってもらえるか」を接客教育の基準にしています。

実際に今年【CITIZEN(シチズン)】がクラウドファンディングを利用し約1億円を集め、【蔦屋家電+】に新店舗をオープンしたんです。このお店の販売員は、商品を売るのではなくいちファンとしてブランドや商品愛を語るという接客方法を行なっているんですけど、結果として1番売れている店舗になったそうです。そういった事実も出ているので、これはただの綺麗事ではなくセールステクニックとして時代に合ってるんだと思います。

─ 使えるお金が限られてるからこそ、ストーリーや愛が伝わる物が欲しくなりますもんね。

簡単には情報にアクセスできなかった時代は販売員が持っている知識をお客さまに伝え、その情報の中で選択してもらい、買っていただいていましたが、今は誰もが平等に情報にアクセスできるようになり、来店した時点でお客さまがどれだけの情報を持っていて何と比較しているのかが販売員も掴めず売りづらくなってしまったんです。だとしたら、「ありがとう」って言ってもらえる接客の方が買ってもらえるんじゃないかって。

もっと言うと、人口が減って新規顧客が減っていく中で顧客維持をするには「この店員さんにお願いしたら間違いない物を提案しれくれる」という信頼感を得る必要があります。昔からあった個人アドバイザーのような接客ができる人が強くなっていく時代がまたやってきたなと感じています。

データを利用した店舗運営を目指す

─ 今後の目標はありますか?

今年に入って、トップセラーを中心にした事業化を進めています。新しいメンバーが増えてきたので、これからは販売員のブラックボックスを可視化し、データとして提供していきたいですね。例えば、“いらっしゃいませから、何秒後にこういうことを言ったら購入率が上がる”を見える化したり。売れる販売員に方法を聞いても「おすすめしたら買ってくれました」というようにふわっとしたことを言う販売員が多いんですけど、実際はそれまでにちょっとした間だったり言葉があるはずなので、そういったところを解析できる未来になれば、適した人材を適した人数でお店を運営できると思うんです。

 

Topseller.Style:https://topseller.style/


今回お話を聞いていく中で、まだまだアナログな側面が多い店舗運営ですが、昔からの運営方法やあり方そのものを変えていく必要があるのだなと感じました。そして、販売員出身で店舗経営・メディア運営などさまざまな経験をしてきた四元さんだからこそ、広い目線で学生に授業を教えることができるのだと思います。アパレル業界の経験、IT業界の知識、両方を兼ね備えた数少ない彼が今後取り組んでいく事業やサービスがとても楽しみです。

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