2019.10.16 COLUMN

東コレブランドの破綻の原因は?─ビジネスモデルをわかりやすく解説─

by 深地雅也

こんにちは、深地です。

東京ファッションウィーク、所謂「東コレ」が開催され、毎年の風物詩のように東コレは今後どうなっていくか議論が交わされています。大きな変化と言えば、スポンサーがAmazonから楽天に変わり、Rakuten Fashion Week Tokyoと名前が変わった事でしょうか。ファッション業界からは無駄に「ダサい」と断罪される楽天ですが、ここに来て業界内での存在感を増している印象があります。

一方で、メインコンテンツとなる東コレブランドと呼ばれるデザイナーズ系ブランドですが、いつも通り状況が芳しくありません。

 

東コレブランド「ノゾミ イシグロ」が破産 負債総額は7900万円

元コムデギャルソンのパタンナーであり、ジュンヤワタナベの初期メンバーでもあるノゾミイシグロが破産との報道。年間売上も4000万円と、経営に苦しんでいたのがわかる規模感です。このような事例は東コレブランドでは珍しくも無く、LVMHプライズでファイナリストまでノミネートされたファセッタズムですら4000万円強で会社を売却しています。

仕事柄、若者からよく相談を受ける筆者ですが、皆さん、知名度が高い=売れているブランドという認識があるようで、東コレのようなブランドを目指す人間をちらほら見かけます。高額なブランドは所得や興味関心の度合いにより、買える人間もかなり絞られ、市場規模自体が小さいという事もあるのですが、ここまで縮小している要因の一つに「ビジネスモデル」が挙げられると思うのです。そこで今回は、筆者の過去の経験上、何故東コレ系のブランドが苦戦しているか、ビジネスモデルから紐解いてみたいと思います。

 

販売チャネルは卸がメイン


Duy Hoang

東コレブランドはセレクトショップへの卸が販売チャネルとしてはメインです。卸の商売ですが、大体が「掛け率」というものを使って取引きされます。

例えば、とあるセレクトショップが上代(定価)で1000万円分の商品を 1シーズン(6ヶ月)でオーダーしたとします。この時、掛け率が60%と設定されている場合どうなるか。

1000万円 ×  60%  = 600万円

これがセレクトショップの仕入れ金額になります。単純に計算すると、セレクトショップが1000万円分全部売り切れば、粗利が1シーズンで400万円発生するといった内容です。この掛け率、ブランドとショップのパワーバランスによって変わってきますが、大体が50~60%で取引されていますので、商品の原価率は50から60%になる訳ですね。セレクトショップの利益率が低いのは、そもそもの粗利が少ないからです。しかも消化率100%なんていう事はほとんどありませんし、余ればセールするのでもっと利益は削られます。

ブランド側からしたら、毎シーズンまとまった売上が欲しいから、ショップごとに「ミニマム設定」というものを設けるところもあります。1シーズンにショップに買ってもらう金額の下限を決めておくといった契約ですね。1シーズン上代で300万円は最低限買ってください、とかそんな感じになります。という事は、10件得意先ができれば上代換算で3000万円の売上が取れる!と計算できるのですが、それがそうもいきません。先述した通り、セレクトショップの利益率は低く、リスクを負ってミニマム通りの商品を買い取ろうとしてくれるショップが少なくなってきています。ブランド側も何とか売上を作りたいから、今度はこのミニマムを崩して、もっと少ない金額でいいから買ってもらおうとしたり、委託(つまり余れば返品可能)で販売したりという対応をするのです。

こうなってくると、得意先の件数は増えますが、手間ばかりかかって利益が確保できず、儲けが発生しにくくなってくるのです。これが卸の難しいところではないでしょうか。小人数で回せるならまだやりようはあるでしょうけど、変に規模感が出てくると無駄な人件費がかなり発生してしまいます。では何故、卸を限定的にして小売をやらないのでしょうか?

 

直営店はイニシャルコストが高い

実店舗を展開するとなると、店舗の内装工事費用・什器代・備品代などの初期費用が莫大にかかる上に、販売員の給与・店舗の家賃などがランニングで必要になります。また、ショップを埋める為には、商品の型数もそれなりに無いと運営できないですし、型数・在庫が増えると生産するのにまた費用がかかります。小売を始めるって事はそれだけリスクが大きくなるのです。極端な話、卸ならサンプル1点でもセレクトが扱ってくれれば売上は発生しますから、リスクの大きさが違います。もちろん、卸でも商品は生産しますが、セレクトがオーダーを付けてから生産をスタートするケースがほとんどでしょうから、受注発注方式でリスクはまだ軽減できます。生産に先にお金を支払わないといけませんので、キャッシュフローを担保するのは大変ですが。

 

MD設計

更に小売の難易度を上げるのがMDの設計ですね。型数が増えると、当然在庫が余りやすい。つまり消化率が下がってしまいます。これを解決する為に、シーズンごとの品揃え計画とそれに連動した販促計画を立案する必要がありますが、このノウハウを持っている人材もまた少ないのです。デザイナーズ系のブランドでは、デザイナーが1人でそこを担保したりするケースもありますが、普通の企業であれば分業しているものを1人でやるのは、かなりハードルが高いのです。

 

ECで販売すればいいのでは?


Kaleidico

上記のようなお話をしますと、「じゃ、まずはECから始めてリスクを軽減」という事を考える人も多いのですが、ブランド認知が高く、既に一定数顧客リストを自社で持っているなら売上はすぐ取れるでしょうけど、今まで小売をやってきていないブランドはそうもいきません。また、東コレ系のブランドは卸メインでブランドを運営してきていますから、自社ECでなくともお客さんはそのブランドを買えてしまいます。セレクトとは違った購買体験を提供したり、ポイント施策などでお得に設計したりと差別化が必要になってきます。事前にソーシャル運用がしっかりできていて、見込み客を囲い込んでいるなら話も変わってくるのでしょうけど、それが出来ていれば今苦労していない訳です。


延々ネガティブな事を言ってしまいましたが、これが現実なので売る為には11点、ここをクリアしていかなければなりません。ブランドを運営するという事はそれだけお金もかかるし、難しい事なのです。Instagramで集客して、ECで販売。販促はSNS広告とインフルエンサーマーケティングで、と簡単に思っている人もいらっしゃるかもしれませんが、そんな簡単にブランドが作れるならみんなやってます。卸が悪いという訳ではありませんが、これから東コレが盛り上がっていくには、既存のビジネスモデルからの脱却も必要な事ではないでしょうか。

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