2019.05.10 INTERVIEW

渋谷からファッションの常識を変える。アダストリア・イノベーションラボの挑戦

by STYLE it.編集部

【LOWRYS FARM(ローリーズファーム)】や【GLOBAL WORK(グローバルワーク)】など多数のブランドを運営している【株式会社アダストリア】には、新規事業を開発している【アダストリア・イノベーションラボ】というチームがあるのをご存知でしょうか?立ち上げて1年半のチームですが、2019年4月には2つの新サービスをリリースしています。今回は、挑戦と失敗を繰り返しながらファッション×テクノロジーの可能性を広げるために尽力しているイノベーションラボ・部長、高橋朗さんにお話を伺ってきました。

新規事業を生み出し続けるイノベーションラボ

アルバイトからスタートし、新卒で入社。店長を務めた後、自社ECの立ち上げのため本社に異動。広告やマーケティングを担当し、ホールディングス化の際に転籍し経営管理やCRMの立ち上げに携わる。一度退職したのち、イノベーションラボの立ち上げのために2年前に再度入社。

 

- イノベーションラボ立ち上げのきっかけと事業内容を教えてください。

今までのモノを企画、生産、販売、シェアリングをするという商流が、メルカリやZOZO USEDの登場により、モノを選ぶ際の軸が広がったと感じています。弊社は垂直統合型のSPAモデルを磨き続けてきたんですけど、そんな商流の中、ここ数年でお客さまが洋服を選ぶ軸が変わったのではないかという危機感が生まれました。その変化に対応するために、テクノロジーを活用しつつ、自分たちで顧客視点をイノベーションする事業を生み出していこうという思いから立ち上がりました。

スタートアップに入ってもらったり、自社ECの基盤や店舗を活用したりしながら新しい事業モデルを作っている事業部になります。

- イノベーションラボ内で高橋さんはどんな役割なんですか?

最初は僕1人で立ち上げまして、今は5,6人のチームの部門長として部全体のディレクションを行なっています。ただ、ベンチャーのようなチームなので、プロジェクトごとにディレクターとプロジェクトマネージャーを立て、それぞれが強い領域を補完し合うようなフラットな関係性ですね。

まだ顕在化していない課題を解決していく

- 企画をする際、どんな軸がありますか?

顕在化しているユーザーの課題と、潜在的にあるがまだ誰も気づいていない課題をどのように解決するかが軸になっています。僕は後者の方が大事だと考えていて、どのようにその課題を見つけられるのかを、事業をつくりながら常に考えています。実際にサービスをリリースすると、自分たちが課題だと認識していなかった潜在的な部分が出てきたりするので、時にはピボット(方向転換)し直したりもします。

- これまで立ち上げてきた事業について教えてください。

元々お下がりの文化があった子供服に着目して、【KIDSROBE(キッズローブ)】という子供服の古着を使ったシェアリングエコノミー事業を立ち上げました。すぐ着られなくなる子供服を、みんなでシェアできる大きなタンスを作りましょう。というコンセプトの下、去年9月頃にβ版でリリースしました。ユーザーヒアリングをしながら機能開発を続け、5月に正式版をリリースします。ここからしっかりと事業として確立できるように進めています。

http://www.dot-st.com/cp/stgo#

他には、2019年4月10日~2019年5月10日の期間限定で【[.st] GO(ドットエスティーゴー)】をリリースしました。これは、お店で販売している商品にスマホアプリをかざすと5点まで商品を持って帰れるというサービスで、今は博多にある8店舗限定で実証実験を行なっています。家で試着をしてみて、手持ちの服とコーディネートをしてみて気に入ればその場で決済ができます。

- 上手くいかなかった事業はありますか?

パーソナルスタイリングの定期配送の事業を立ち上げたんですけど、パーソナライゼーションをしようとすると、ユーザーが増えれば増えるほどスタイリングを考える人の数が必要になります。オンラインのビジネスモデル上成り立たせることが難しく、お客さまが本当に求めているサービスなのかというところも含めて、検証しています。とはいえ、完全にクローズした案件はまだなくて、失敗例も含めてピボットし直しているような状況です。

テクノロジーが業界を支える基盤になるように


Amy Hirschi

- ファッションとテクノロジーはどのように関わるべきだと思いますか?

ファッションの領域でいうと、テクノロジーだけでお客さまの生活を豊かにするのはなかなか難しい。お客さまがまだ気づいていない、潜在的なニーズを解決するのがテクノロジーの技術であり、インフラ(基盤)になるといいなと思っています。

ビジネスサイドとしては、課題に気づいて仮説を立てたり、支える物としてテクノロジーが必要だと思っていて。そこの目的と手段が入れ替わるような考え方の人も多いので、それは違うよね、ということを我々が事業をつくることでアピールしていきたいです。

- 社内的にもそういったマインドを持ってる方が多いんですか?

アダストリアは、ビジネスモデルを過去何度も変えているんですよ。紳士服屋から始まり、インポートのセレクトショップ、ストアブランド、SPAなど業態を変えながら成長してきたので、全社的に変化することが当たり前で、変化しないことへの方が危機感を持っています。そのため、チャレンジに関してはすごく許容してもらっていて、むしろ何もしない方が怒られるんです(笑)。

逆にそういうムードがないと新規事業を進めていくことは難しいだろうなと思います。かといって、他のアパレル企業も危機感がないとかテクノロジーを活用しないという訳ではなくて、会社の大小は関係なくみんなが納得していても、一歩踏み出す時にやる・やらないの意思決定が難しいのかなと。

業界の構造を変える、新たな事業を確立する

- 個人的に感じている業界の課題などはありますか?

今はファッションを楽しめる世界だと思うのですが、服を作って、運んで、売るという流れに持続可能性があるのか、続けられるのか、ということは誰もまだ分かっていません。なので、今まではバリューチェーンという一方通行の矢だったものを、バリューサイクルに変えられるようなモデルを作ることが業界の課題だと思っています。

産業の構造自体が40年くらい変わってないと感じていて。構造そのものをアップデートしていかないと、このファッションを楽しめる世界を続けることは難しいのかもしれないです。世の中のライフスタイルはこんなに変わっているのに、このままで大丈夫なのか。という危機感があります。

- 今後の展開や目標を教えてください。

1年半イノベーションラボをやってきて、お客さまにフィットした事業が生まれてきているので、そこをしっかり成長させつつ、事業になったものは上手くラボから切り離して自走していけるようにしたいです。僕らは生み出し続けることが役割なので、常に新しいものを生み出すためにも、事業やサービスを確立させてしっかり仕分けをしていきたいです。

個人的には、ファッションの領域でやりたいことや思っていることがあれば、どんどんコンタクトをとって欲しいと思っています。会社の中だけで閉じてしまうのはナンセンスだと思っていて、やはり世の中の課題とかお客さまの課題を解決するには、外の人と一緒に考えることが大切だと思います。ラボは割と開かれた場所だと思うので、もっともっといろんな人と繋がっていきたいです。

 

アダストリア イノベーションラボHP:https://www.adastria.co.jp/innovation_lab/


個人的にも、アダストリアは自社ECに力を入れているなあ。と感じていたのですが、今回お話を聞く中で会社の空気やマインドについて知ることができ、より素敵な会社だと感じました。しっかりとした基盤と多くの店舗を持つアダストリアのイノベーションラボだからこそ生み出せる、新たなファッション×テクノロジーのサービスが楽しみです。

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