2019.03.09 INTERVIEW

リアルタイムでトレンドが分かる。AIを使った、メーカー/EC向けデータ分析サービス

by STYLE it.編集部

2019年2月14日、ファッションに特化した人工知能を開発・展開するベンチャー企業【株式会社ニューロープ】から、トレンド分析サービス【#CBK forecast(カブキフォーキャスト)】がリリースされました。

#CBK forecastとは

2014年から蓄積してきたSNS、ECサイト、メディアなどに掲載されているファッションスナップ画像のアイテム50万点以上をAIデータの、色・柄・素材などを分析して定量的なデータとしてメーカー、卸、リテールなどファッション関連の企業に提供。

導入企業は専用のダッシュボードで日々更新されるトレンド情報を見ることができます。様々な切り口やグラフでデータを見ることができたり、ローデータの形式でエクスポートし、分析することもできます。

今回、サービスをリリースした株式会社ニューロープ代表取締役・酒井聡さんに、事業の内容からサービスが与えるインパクトや解決できる問題になどついてお話を聞いてきました。

ファッションAIを軸にした事業

- 簡単な事業説明をお願いします。

弊社は、2014年から【#CBK(カブキ)】というレディースファッションメディアを運営しています。#CBKは、提携しているモデル・インスタグラマーさん300人程度のスナップを見ることができ、気になったスナップの詳細から類似アイテムの購入ページに飛ぶことができます。着用アイテムの類似品を表示させるために、人力で入力して蓄積してきたデータを元に、AIを作りました。

AIの精度を試せるように、スナップを投げるとデータを解析してくれる「ファッションおじさん」と、スタイリングを提案してくれる「人工知能ショップ店員Mika」という2つのLINEアカウントも運用していて、こういったAIをSaaS(※1)という形で月額費用をいただきながら他メディアやECサイト・店舗に提供しています。

-具体的にはどのように使用されているんですか?

アダストリアさんやルミネさんにも提供していて、ユーザーがサイト内の画像検索機能にスナップをアップロードすると、各ECサイトで取り扱っているアイテムの中から類似商品を表示してくれる、いわゆるビジュアルコマースと呼ばれるものをやっています。他にも、ディノス・セシールさんとは弊社のAIを使用して、配送する紙カタログの内容をお客様ごとに変えて作成するといったことを行なっていたり、監視カメラの映像を解析して、来店客が何を着て来ているのか分析したりもしています。今までは基本的にECサイト向けにレコメンデーションして導入・利用してもらっていたんですけど、今回リリースしたサービスのようにトレンド分析などEC以外のところも進めていきたいと思っています。

 

https://dot-st.cubki.jp/image_search#/

- AIにデータを蓄積させるって大変な作業じゃないですか?

そうなんです。最初は1枚1枚自分たちでデータを入力していましたね(笑)。ファッションカテゴリの解析は特に難しくて、オペレーション化してからはワーカーさんたちにお願いしていきました。それでも実際にAIに学習させて、出力して、を繰り返しながら、アルゴリズムを改善するのか、データ数を増やすのか、検証しながら進めていたので、1度登録したスナップを改めて洗い直しして、タグを追加したりもした結果、リリースまで1年半ほどかかりましたね。現在も学習させるということは行なっていて、常に精度を高めていっています。

 

お客さんの声から生まれたサービス

- AIを使ったデータ解析を行おうと思ったきっかけはなんですか?

元々運営していたメディア事業自体が、雑誌でモデルさんが着用しているアイテムをプチプラで買えたり、類似アイテムを見つけられたりする世界観を作りたくて立ち上げたんです。そこからピボットして、メーカーやブランドの方から課題をヒアリングしながらAIサービスを構築していきました。

- データ解析もお客さんからの要望があったんですか?

そうですね。ファッション業界ではMDさんやバイヤーさんが前年の売上データを参考にしながら、トレンドも加味して新しく何を作るか考えていたりするのですが、自社の商品以外で売れたモノや流行ったモノを知りたいという声を多くいただいて。なので、弊社ではTwitter、Instagram、WEARなどのさまざまなメディアを解析して、売れているモノを定量的に分析することにしました。

コレクションに代表されるような思想・コンセプト・カルチャーといった文脈や、MDさん、バイヤーさんのひらめきは欠かせないことに変わりはありませんが、ひとまず「現在足りていないインプットを補う」というような立ち位置のサービスになります。

定量的なトレンドデータが叶える未来

- このサービスが浸透すると、どんなことが可能になると考えていますか?

今回リリースした#CBK forecastは、「もし作っていれば売れたのに」といった見逃しを減らすことが大きな目的なので、立つべき売りを立てられると思います。もう1つ、生産のリードタイムがどんどん短くなっている中で、今SNSで流行っているものを「作ろう」と決めてから翌週の月曜日には店頭に並ぶようなことが起こり得ると思っていて。そうなると、リアルタイムで定量的なデータを測れるこのデータはすごく実用的になるんじゃないかと思います。

- 現状#CBK forecastを利用されている企業さんはどんな風に活用しているんですか?

わかりやすい例でいうと、シューケア用品を売っているメーカーさんで、そこは靴用のクリームや防水スプレーを置いてもらうための店舗営業をする際に、世の中に出回ってる靴の素材と色のデータを見て「この色と素材が多いから、店舗にこの色のクリームを置くといいですよ。」と提案の資料として弊社のデータを使ってくださっています。1つの商材に特化していると分析のとっかかりがいいですね。

- トレンド予測ができることで、業界的にどんなメリットがありますか?

定量的なデータを把握することで最低限の生産での販売が可能になり、余剰在庫が減ることで小売価格も下げることができます。そうなれば、ユニクロさんやUNITED TOKYO(ユナイテッドトーキョー)さんのような「コストパフォーマンスが高い」と言われている企業に見られるように、業界全体のコスパが相対的に良くなり、消費者がファッションを楽しみやすくなって、業界に流れるお金が増えると思うんですよ。音楽やゲーム、イベント、美容など様々なドメインと並べたときに、相対的にファッションが魅力を増すということが起こりうる。安売りを良しとするわけではなく、値が張っていても金額に対する品質が上回っているような世界観を実現したいと考えています。

正直このAIデータだけではファッション業界の様々な問題を解決できるとは思っていません。売れ筋ばかりを追うのがファッションではないし、おしゃれを楽しむ人ほど同質化を嫌い、飽和したカルチャーは例外なく衰退してきました。多様性、移ろいがファッションの根源的な価値でもあるし、その分かりにくいニーズに応えるためにファッション業界は複雑ながらもバランスの取れた、素晴らしいシステムを作り上げてきました。ファッション業界のことを知るほどに価値の多様性、機能の多層性、奥深さに途方もない気分になることもあります。

そんな中でも微力ながら、私たちは他にもAIを使った解決策を仕込んでいて、既存プレイヤーの皆さまをエンパワーしていくかたちで業界に貢献するべく、多面的に取り組んで行こうと思っています。一社で何もかもやろうという気も、できる自信も毛頭ありません(笑)。

- 今後の目標や目指していることを教えてください。

目標は、ファッション領域でバーティカルにAIを展開して、店舗・ECサイト、メディア、生産などあちこちでインフラ的なポジションを確立することです。世界展開も考えていて、今台湾やタイでのマーケティングも進めています

 

株式会社ニューロープHP:https://scnnr.cubki.jp/

#CBK forecast プレスリリース:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000020.000024452.html

 

※1:提供者(サーバー)側で稼働しているソフトウェアを、インターネット等のネットワーク経由で、利用者がサービスとして利用する状況を指します。

 


 

今回お話を聞いて、監視カメラの画像を解析したり、対象者によっておすすめ商品を変えていたりと、筆者が思ってた以上にファッション業界におけるAIの可能性は広いんだなと感じました。リアルタイムのトレンドを定量データとして測れる#CBK forecastも、需要があることは間違いないので、これからどんな風に活用されていくのか楽しみです。

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