こんにちは、深地です。
ちょっと小難しい話をしますが、マーケティング用語で「ポジショニング」という言葉があります。筆者が個人的に思う、ファッション業界のわかりやすいポジショニングの事例で言いますと「ジェラートピケ」。
※ポジショニング…顧客に対して自社の製品・サービスを他社と「差別化」する事を指す。
今でこそ「お部屋の中のファッション」というポジションを取るブランドも増えてきましたが、ブランド発足当時は同様のポジションを取るブランドがほとんど無かった印象があります。「部屋着」を販売しているブランドが多数ある中で、あえて用途を絞り、訴求する事でブランドの差別化を図った好例と言えるでしょう。
今回ご紹介するブランドはそんな「お部屋の中のファッション」を更に尖らせた、「おしゃれなルームシューズ」を提案しているのです。
BIRDIES
(instagram:@Birdies)
【BIRDIES(バーディーズ)】というブランドをご存知でしょうか?ショップの展開がオンラインしかないところを見ると、いわゆるD2Cブランドなのですが、このブランドの訴求の仕方がとってもユニークなのです。
「ルームシューズ」の提案だからこその快適さ
室内用として生まれたシューズで言いますと、【Repetto(レペット)】なんかもそうなんですが、BIRDIESも基本的には、ルームシューズの用途としてのイメージビジュアルが多いです。
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アイテムの特性としては、とにかく快適である事。スニーカーのような安定性、ルームシューズならではの柔らかさ、なのにデザイン性にも優れているという点ですね。クッションが7層もあるようですが、インソールもクッション性があるのがわかりやすいデザインになっています。価格帯は95ドル~140ドル程度で、D2Cブランドとして売りやすい価格設定になっていますね。アメリカは室内でも靴を履きますから、こういったアイテムが出てくるのもうなづけます。しかしこの製品、「slipper」と名乗りながらも様々な用途で訴求されています。
ちょっとした外出から旅行にまで使える
ブランドのInstagramを観測していると、ブランド発信で様々な提案をしているのがわかります。
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ペットの散歩や、
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旅行に行く際のシューズの提案など。
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室内でのヴィジュアルが多いのは多いのですが、外出でも使えるような提案をしています。これには理由があるのですが、ブランドを展開していく中で影響力のある人物に商品を使ってほしいという事でメーガン・マークルさんという方に商品をプレゼントしたそうです。いわゆるインフルエンサーマーケティングみたいなものですね。
※メーガン・マークル…イギリス王室のサセックス公爵ヘンリー王子の配偶者。
しかし、このメーガン・マークルさんが、プレゼントされたシューズを外で使い始め、Instagramでタグを付けて公開したようなのです。それがきっかけで「外でも使える」という訴求に切り替わったという事なんですが、この経緯がセールスの幅を広げるきっかけになっています。
尖らせたところで用途は顧客が決める
ブランドとしてポジションを決め、尖らせる事で差別化するのは重要です。しかし、結局はその使い方を決めるのは顧客に他ならない。これはブランドとしてのアイデンティティ・コンセプトはそのままに、セールスを拡大する事が可能になります。日本には室内でシューズを履くという習慣はありませんが、例えば、
オフィスや学校用で、
自宅のベランダ用で、
もちろん近隣に出かける時も、
旅行や出張先のホテル時も、
このシューズを使う事はできます。軽くて履き心地が良くてデザイン性にも優れてるのですから、気軽に履いていける場所や、出先に持っていく事も容易です。このようにブランドコンセプト・世界観を設定しても、製品特性から用途が拡張され、セールスが拡大されるのであれば「室内シューズ」に限定しても売上を伸ばす事は可能でしょう。
余談ですが、ギフトカードも買えるようになっています。確かにこれ、オールシーズン使える物なのでギフトとしても適しています。ここでもまた用途が広がってますね。
マーケティング戦略を立案する時に、尖ったポジションを取った場合のセールス拡大はブランドの課題になりやすいです。そんな時、顧客の製品の使い方はその課題を解決するヒントになります。その製品の持つ本質的な価値は何なのか?は、ブランドを展開してみないとわからないものですね。