2018.12.26 COLUMN

サステナビリティを“掲げる”ブランドではなく、“貫いた”ブランドが売れるのです

by 深地雅也

ファッションニュースウォッチが趣味の筆者ですが、最近の新規ブランドでよく見かける言葉があります。

「エシカル」「サステナビリティ」

上記のワードは恐らく多くの方がよく目にするものではないでしょうか。意味としては、

エシカル倫理的

サステナビリティ持続可能性

という事で、近年の大量生産・大量消費型のファッションのカウンターとして生まれた考え方になります。これについては2015年に放映された映画「true cost」でファストファッションに代表される大量生産・大量消費が及ぼす影響についてわかりやすく説明されていましたのでよろしければ参考までに。

新規で始まるブランドのコンセプトの中にはこのワードが結構な頻度で差し込まれています。有名どころで言いますとエバーレーンなんかもその類ですね。「徹底した透明性」を掲げ、生産背景や原価まで全て開示するやり方は一時期話題にもなりました。販売手法でブランドのコンセプトを体現するって面白い発想ですが、同様に面白い手法で販売しているブランドがあるのです。

Sustainable clothing startup For Days raises $2.8M for its closed-loop manufacturing process

上記は1ヶ月ほど前のテッククランチの記事になりますが、「For Days」というブランドが$2.8M(約3億円)の資金調達を実施。まだ始まって日が浅いブランドですが、ブランドの運営手法が非常にユニークなので注目しています。

 

マネタイズはサブスクリプション型

ファッション業界でもサブスクリプションの波は押し寄せてきていますが、こちらのブランドではメンバーシッププログラムが引かれており、

https://fordays.com/plans

Tシャツが、

1     38ドル

3   108ドル

6   210ドル

10 340ドル

の月額料金が発生します。所謂Tシャツのレンタルサービスのようなものですね。全て送料込みのお値段で、1枚につき8ドル追加しますと使っていく中で古くなった物は返送して新しい物に交換してくれます。決して安くは無いですが、「返送する」というところがこのブランドのポイントです。

 

集めたTシャツは再利用

お客から返送されたTシャツは全てオーガニックコットンの糸と古いTシャツを70/30の割合で混ぜ合わせ、新しいTシャツに変えます。つまり廃棄を極力減らしていき、衣料品が循環するような流れを作っているのです。ここで生まれた利益は、廃棄物を生み出さない新しい製造ラインを作っていく事に投資しているようです。確かに製造の工程がまさに「サステナビリティ」であると言えそうです。それ以外のところでも、

水や二酸化炭素、廃棄でどれくらい貢献したかサイト上で公開していたり、

原料はGLOBAL ORGANIC TEXTILE STANDARDという機関が認証しているオーガニックコットンを使用。通常のコットンの25%は農薬を使用していて水質汚染にも繋がっています。オーガニックコットンにする事でそれを60%ほど軽減できるとの事です。

製品パッケージにもコンセプトが浸透していて、製品タグを使わなかったり、パッケージは全てリサイクルできる素材にしています。また、そのパッケージを返送用にも使用します。ポリ袋は一切使わず、倉庫でも使用を禁止しています。

シッピングについてもCO2の排出量を削減できるような取り組みをしていたりと、製品だけでなくそれを取り巻く全ての部分でブランドコンセプトを体現していると言えるでしょう。

 

社会貢献はデジタルブランディングに向いている?

上記のFor Daysは店舗を持たない、いわゆるD2Cブランドの一つと言えますが、D2Cブランドで「サステナビリティ」を打ち出すブランドは多数存在します。何故こういった事例が後を絶たないのか?これについては筆者の周りでもある兆候が見られます。

この「エシカル」「サステナビリティ」ですが、筆者の周辺に限って言えば特に高学歴な大学生が好んでいるように感じております。とある大学では「エシコレ」と称してエシカルファッションを題材にしたファッションショーが行われていましたし、たまにビジネス相談に来るとある大学生も「将来はエシカルファッションで起業したい!」なんて事を言ってたりします。彼らはwebリテラシーが高く、主にweb上から積極的にインプットする特徴がありますので、こういった社会貢献的な要素を含むファッションブランドに影響を受けやすいのではないかと。

つまり、「エシカル」「サステナビリティ」を掲げるブランドは総じてデジタルブランディングに向いているという事です。逆説的に言うと、数多あるブランドの中でもそういったコンセプトのブランドばかりが残るようになった可能性もありますが。

ファッションは今や日用品として大衆化している側面もありますが、起源は王族や一部のブルジョワの嗜好品でした。プレタポルテ(高級既成服)が誕生してから、大量生産・大量消費は既定路線であったはずですし、ファッションに対して「サステナビリティ」を求めるというのは個人的には腑に落ちていません。嗜好品の象徴であるラグジュアリーは今でも衣料品を廃棄していますし、そんなブランドが「ファーフリー」を唱えたところでツッコミどころばかりです。

口だけでは何とでも綺麗事を言えますしポジショントークに溢れる時代に、どこまでブランドとして自分たちの掲げた思いを製品を通して貫けるか。For Daysの取り組みを見ていますと、そんな強い思いが重要なんだと考えさせられます。ファッションは過去から思想を表現するツールでもありましたが、マーケティング戦略だけでなく、「思い」を具現化する事がブランドには大切な要素であると言えそうです。

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