2018.12.18 INTERVIEW

色や素材の差に惹かれる。着ながら学ぶ、クラシックファッションの楽しみ方

by STYLE it.編集部

アパレル・IT業界で働く人々の働き方・想いを紹介していく連載「私のファッションスタイル」。第3回は、コレクションを投稿するだけで、自分だけのオリジナルミュージアムが作れるサービス【MUUSEO(ミューゼオ)】を運営されている【ミューゼオ株式会社】の代表・成松淳さんが考える、ファッションやアパレル業界についてお話を伺ってきました!

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オシャレになりたいというより、違いを知りたい

- クラシックなファッションを好きになったきっかけを教えてください。

基本的に“知りたい”という欲求がベースにあって、身の回りのものを知りたいという思いから、1番身近な服や靴に興味を持つようになりました。なぜか分からないんですけど、スーツや革靴のように、同じような形で少しずつディテールの差があるものに惹かれました。例えば、ジャケットの襟の幅が違うだけでも印象が変わるじゃないですか。革靴も、基本的には同じ形をしているけど、デザインが微妙に違う。それが面白いんですよね。オシャレになりたいという願望とは少し違っていて、ディテールを知りたいという欲求からきていると思います。

ー 具体的にはどんな差があるんですか?

太さの違いによる印象の差とか、素材ですね。今着ているスーツはフランネルという素材のスーツなんですけど、「フランネルだとこんな風に見えて使った感じはこうなのか、じゃあ次はツイードを使ってみよう。」といった感じで新しい物が欲しくなっていきます。更に、産地によってツイードにも色んな種類があって、一般的に有名なハリスツイード以外にも、アイルランドのドニゴールツイードやスコットランドのスコティッシュツイードなどそれぞれ使ってみて違いを知りたくなってしまうんですよね。

ー キリがないですね(笑)

キリないですね。私の場合は、ひたすら素材と色とディテールを少しずつ変えながら、スーツを作ったり買ったりしています。服を変えながら自分の中の地図を作っているような感覚です。

集めることは、脳みその中で知識が広がっていくこと

ー 他にはどういったコレクションがあるんですか?

時計、文房具、ターコイズ、あとは銀器が好きです。イギリスの銀器はとても面白くて、バターナイフ1つとっても100年くらい前のロココっぽいデザインから、市民文化になると少しシンプルに変わったりと、時代によって形が変わっていきます。ターコイズも鉱山によって採れる石が違ったり、こういった豆知識を知ることが、また探求心をくすぐるんです。

ー どのように深掘りをしていくんですか?

まず1つの物に対して興味を持って、深掘りをしていきます。例えば銀器は、20代の時に通っていたカフェで「紅茶を銀器のシルバーポットで飲むと美味しいんだよ。」と教えてもらい、90年くらい前のティーポットを購入しました。買った物について調べて行くうちに、ナイフやスプーンの面白さにも気付き、東京やイギリスのアンティーク・シルバーショップを見て回るようになりました。このように、ひとつの情報が脳内で連鎖しながら広がっていくことが面白いんです。

- 楽しみながら勉強をしているような感じですね。

そうですね。物そのものが欲しいだけではなく“知りたい物”を調べながら手にいれていくことは、学習に似ていると思います。スマホが生活の主軸になっている今、与えられるものを処理していく能力ばかりが身についていると思うんです。でも、自分の人生は自分で作るものなので、自ら深堀りをする力が大切。人間の“知ろうとする力”を伸ばすためにも、収集やコレクションが本当は知的な行為なんだと知ってもらえると、嬉しいです。自分が知りたいことを深堀りして、それを表現することで、誰かの人生を開くきっかけになれれば嬉しいです。

ファッションが贅沢品になってしまった

- アパレル業界に対して感じる課題はありますか?

ファッションを含め、物に関わる事業者は売るプレイヤーと買い取るプレイヤーが中心になっていると感じているので、消費者としては、もっと自分の生活をより良く変えてくれるような、あるいは物の楽しみ方を教えてくれるような存在が必要だと思っているんですよね。原宿にあるショップの店舗マネージャーさんが、「服が嗜好品になっちゃったんですよね。」と仰っていて、納得しました。ファストファッションが広まったことで、ファッションが贅沢なものになったんだと思います。

今ビジネスが上手くいってる会社は、多品種少量生産を実現していたり、自分たちの固定客を自分たちで掴んでいたりと、お客さまを離さないための工夫を丁寧に行なっています。マーケットプレイスに出品して、売れるのを待つという販売の仕方は終わりを迎えているような気がします。

- 同感です。

自分が課題に感じるのはそんなところでしょうか。ただ目に付いた服を着るのではなく、自分の生活を楽しくしてくれるような物を自分の意志で選ぶという感覚が大切だと思っています。人の感覚も物も二極化する中で、“自分の生活を良くしてくれる物を、こだわりを持って選び、使うことが楽しい”ということを伝えていきたいと思っています。

いい物を長く使うという価値観

- 成松さん自身が今後目指していることはありますか?

日本と、イギリス、ニュージーランドを行ったり来たりしながら暮らせたらいいな、と思っています。あとは、ヨーロッパなどで見られる古い家を手入れしながら長く使ったり、いい生地でできたジャケットを仕立て直ししながら何世代かで着たりする習慣を残したいです。いい物を使う人と作る人、両方が残らないといい物に対して愛情を持って使って生活を楽しむというサイクルは残せないので、そういった価値観を広げていきたいです。


ほんの少しの違いだけど、そこに意味や価値がある。ファッションも含め、その差を知ることや、意志を持って選択をすることが人生を豊かにしてくれる。人とモノの関わり方を常に考えている成松さんだからこそ、作り出せる世界があるんだなと感じました。

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